オトナの教養 週末の一冊

2014年6月26日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

ーーアメリカの映画などを観ていると精子バンクが登場することがあります。日本でも精子バンクを利用した、DIと呼ばれるドナーの精子を使った人工授精は行われているんでしょうか?

小林:日本では、終戦直後にマラリアに感染した無精子症の兵士が多かったため、その人たちに子どもができないと国力が落ちるということで、国策として旧帝大を中心に行われていました。しかし、なかなかドナーがいなかったようです。でも、慶應大学の医学部だけは、医学部の3年生以上の学生たちにドナーをお願いしています。ただ、学生もあまり積極的ではなく、個人で提供するというよりも大体がサークルや部活単位で行っていて、報酬はサークルや部活の運営資金に充てているようです。

ーー慶應でもアメリカ映画のようにカタログからドナーを選べるんですか?

小林:慶應の場合、ドナーが匿名というのもありますし、精子は選べません。夫婦と合わせるために血液型だけ選べます。もちろん、ウイルス感染や遺伝子疾患などについては事前に検査をします。

ーーということは、両親が子どもに伝えなければ、子どもは自分がDIで生まれたとはわかりませんね。もしわかった場合ケアが必要のように思います。

小林:「この事実自体、子どもを腕に抱いた瞬間に忘れたほうがいい」と助言もなされてきたようです。

 ケアに関しては、親はDIで子どもを産んでも、そのことをなかなか本人には告げないですよね。ですから、仮に出自を知る権利などの法整備がされても、本人がDIで生まれたことを知らないので、権利行使ができないですよね。でも、子どもは家庭の中になにか違和感があるなと思いながら育つケースもあるらしいんです。

ーーどのようなきっかけで子どもは事実を知るのでしょうか。

小林:『精子提供 父親を知らない子どもたち』(歌代幸子著/新潮社)を読むと、親が離婚する時や、父親が遺伝性疾患を発症した時に、初めて父親と血が繋がっていないことを知ることがあるそうです。

 アメリカでは、日本と比べ養子縁組が多いので、テリング(真実告知)のノウハウが蓄積されています。ですから、精子バンクを利用し生まれた子どもに対してもどういう伝え方が良いのかよく分かっています。例えば、小学校へ入学する前の段階で、子どもの誕生日や家族で旅行し「今が最高」と子どもが思えるときに伝えるそうです。

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