世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月4日

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 米ジョンズ・ホプキンス大学のエリオット・コーエン教授が、5月24日付ワシントン・ポスト紙掲載の論説で、人民解放軍将校5人をサイバースパイ容疑で起訴した今般の司法省の措置のような個人を標的とした措置ではなく、窃取した情報で利益を挙げている中国企業への制裁を課す方が効果的である、と論じています。

 すなわち、司法省は中国軍人5名を産業機密窃取で起訴した。中国のスパイ活動は政府のみならず企業に向けられた大規模なもので、それに光があてられたのは良いことである。

 しかし、これらの中国人が米国に連れて来られない限り、何事も起こらない。理論的には、米国と犯罪人引き渡し条約を結んでいるベルギーのような国で5名が逮捕され、米国に引き渡されることがありうるが、現実にはそういうことはない。多分、ありうるのはブーメラン効果で、中国の米情報将校への報復措置である。

 ホルダー司法長官は、中国が米国の刑事司法を尊重し、手続きが進むようにとの希望を記者会見で表明したが、外国政府が自分のスパイを引き渡すなど、考えられない。

 この件については3つの説明しかない。第1は、司法長官は愚かだというものだが、これはありそうもない。第2は、司法長官は記者を愚かだと思ったということだが、これもありそうもない。第3は、司法長官はこれが純粋にシンボリックな行為と判っているが、気にしていないと言うものである。これが問題である。

 中国の体系的機密窃取という難しい問題に直面した場合、政府には二つの誘惑がある。

 一つは格好付けをすることである。米国の市場から中国のいくつかの企業を締め出すような難しいことの代わりに、中国を非難するジェスチャーをする。何かをしていると、他人を説得しようとする過程で、自分もそう信じてしまう。これはよく起こることで、政権末期にはジェスチャーの力を信じがちになる。

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