ウクライナ問題でプーチンが払った代償


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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6月7-13日号の英エコノミスト誌は、プーチンの対ウクライナ戦略は、上手く行ったかに見えて、思惑通りには行かなかった可能性がある、と報じています。

 すなわち、訪欧したプーチン露大統領には、オランド仏大統領やキャメロン英首相との公式会談が待っており、仏ミストラル艦の売却話も取り消されていない。そのため、プーチンはウクライナをめぐる西側との対立は最悪期を脱したと見ているかもしれない。

 ウクライナの大統領に選出されたポロシェンコは、財政問題と戦闘を終わらせる必要から、プーチンと交渉せざるを得ない。

 もともと、プーチンがロシアとウクライナとの国境に大規模な部隊を配備した目的は、ウクライナ軍を威嚇・抑止し、反乱勢力のために隠れ蓑を提供することだった。ところが、これが上手く行き過ぎてしまい、その結果、当初の政治目標と違って、複数の反乱勢力が群雄割拠する事態が生じてしまった。

 ウクライナの不安定化は願っても、内戦による混乱は望んでいないプーチンは、難しい舵取りを迫られている。

 一方、欧州に関しては、プーチンは、(1)欧州にはロシアを本気で痛めつける気はない、しかし、(2)ロシアをアジアに接近させることにより、西側抜きでやっていけるようにしたい、と思っているようだ。

 (1)については、確かに欧州諸国は、経済制裁を発動して年間4500億ドルの対ロ貿易を失うわけには行かないと思っている。仏ミストラル艦売却の件も、通商への配慮が勝っている証拠だ。さらに、プーチンにとって、欧州各地の極右政党の台頭は心強い。多文化主義や同性愛容認を危険視し、米国が諸悪の根源だと見る仏国民戦線などとロシアは、「イデオロギー的に波長が合う」。

 しかし、アジア接近は大きな地政学的賭けであり、結果もすぐには明らかにならない。5月末にカザフ及びベラルーシと設立に合意したユーラシア経済同盟は、具体的中身が未定であり、経済的意義よりも、政治ショーの色合いが濃い。それに、カザフもベラルーシもロシアとの関係強化を望む一方で、プーチンを警戒している。

 同様に、中国との4000億ドルのガス合意も、象徴的意味は大きいが、アジア新市場開拓のために低価格を受け入れたロシアにとって、長期的に利益になるのかどうかはっきりしない。

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