2024年4月19日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年7月16日

 そこで省みるべきは、わが日本の存在であり、立場である。日本はもとより欧米と同じ世界には属さない。しかしモンゴル征服が及ばなかった点で共通する。以後も国家の規模や作り方でいえば、日本は中露よりもむしろ欧米に近い。国際法・法の支配が明治以来の日本の国是(そうでない時期もあったものの)であり、安倍首相がそのフレーズを連呼するのも、目先の戦術にとどまらない歴史的背景がある。

 クリミアはかつてロシア帝国の南下に不可欠の橋頭堡(きょうとうほ)であり、西欧からすればそれを阻む要衝であった。尖閣は「琉球処分」にさかのぼる日中の懸案であり、中華世界と国際法秩序の切り結ぶ最前線である。互いに無関係なはずの東西眼前の紛争は、ともに共通の国家構造と規範をもつ中露の、西欧国際法秩序に対する歴史的な挑戦ということで、暗合するともいえよう。

 たしかにいまの中露は、欧米に対抗するための「同床異夢」の関係にあるといってよい。考えていることもちがうし、「一枚岩」になれないことはまちがいないだろう。それでも「呉越同舟」はやはりいいすぎであって、両者が呉と越のような不倶戴天の敵にはなりそうもないし、両者と欧米との対立は目先の、短期的なものでもない。あえて「呉越同舟」でたとえるなら、ロシアを含むG8や日中友好がむしろ適合している。

 とりわけいまの中露関係は、「舟」「床」でたとえる「同」じ枠組・利害のほうが勝っている。いかに対立しようとも、たとえば相互理解の乏しい日中対立・中米関係のようなことにはなるまい。

 目前の情況は容易ではないけれども、まずは長いタイムスパンでロシアと中国の正体をみきわめることが重要である。歴史的な国家構造に由来する規範意識や行動原理に着眼することも、国際情勢の現状分析に無用ではあるまい。

[特集]中露関係の真相

(画像・Thinkstock)

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