2024年4月20日(土)

都会に根を張る一店舗主義

2014年8月13日

 「一つは、この数年で進んだ薬事法の改定で、以前のように、自由に生薬は買えなくなった。だから生薬は一切、使っていません」。だが、生薬と体に良い食品の境は曖昧、クコのように食品として売られているものは大丈夫なのだそうだ。「もう一つは酒税法ですが、これは年間の販売量が1トンを超えなければよいということで、あっさりクリアできました」

 目移りしていると、「ちょうど仕上がったばかりのザクロとレモンの養生酒がありますよ」とバラ色の酒を勧めてくれたのが、店長の前田藍さん。

 養生酒で調子づいてきたところに、クラゲやレンコンの甘酢和え、黒磯つぶ貝の煮もの、小ナスとラッキョウ、タデのあえ物といった凝った前菜の盛り合わせ。

 続く皿は、鯉と小ぶりなサトイモ、石川芋と新ペコロスの炒めもの。黒大豆の伝統調味料トウチの風味で、甘さと酸味がふっくらとまろやかだ。次なる季節の養生スープは、胃に優しいハスの実、鶏肉、シイタケの小口切り入りのトウガンのスープ。

鯉と石川芋と新ペコロスの炒めもの シソ、トウチ風味(左)。一口大に切った鯉は臭みもゼロ。こんなに、おいしい鯉料理は初めて。トウガンのスープ(右)。皮ギリギリまでいただけるトウガンの食感がたまらない。  

 「この小ぶりなトウガンは、料理長が修行した池之端の『古月』の師匠が見つけてきた三浦半島の農家です。小さな野菜ばかりを有機で作っているんです。3日前に入ったばかりですよ」と藍さんが解説してくれた。

 この麗しいトウガンスープは、7月から9月の半ばまでのメニュー。

一皿で微妙な食感や風味の違いを楽しめる料理

 前田さんの料理の魅了は、微妙に違う食感や香り、そして甘味や苦み、酸味といった多様な味わいが、一つのお皿の中で楽しめること。

 「どうしても中華というと中華鍋で一気に料理する過程が確立されているので、味が一つにまとまってしまう。でも、自分は、それでは飽きてしまう。だから、自分が食べておいしいと思える料理を目指すと、こんな感じになってきたのです」


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