日本の漁業は崖っぷち

2014年7月18日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

リーダーシップで個別操業枠設定
アメリカのウナギ稚魚

 米国では、ウナギの稚魚の営利漁業を認めているのは、2州のみ。その1つであるメーン州では、2014年の漁獲枠を前年比34%減の5.4トンに設定しました。オリンピック方式では、漁獲競争が激化し、資源への悪影響が懸念されると考え、州政府は過去3年平均の漁獲量に基づき、漁師ごとに個別操業枠を設定しました。漁師が自分の漁獲枠をオーバーした場合はその分罰金が科され、次年度の操業もできなくなるという厳しいものになっています。

 先住民側は共同管理を提案しましたが、州知事は「先住民も関連州法に従うべきであり、不服なら稚魚操業を全面的に閉鎖する」と主張しています。水産業を復活させるために日本にも欲しいリーダーシップです。米国のウナギの稚魚の価格は3年間で20倍に高騰。2009年にキロ220ドルだった価格が、2012年にはキロ4,400ドルに高騰。副業として細々と漁をしていた漁師は、日本人のウナギ好きのおかげで、突然大金を手にするようになっていきました。しかし、そのために漁獲圧力が高まってしまい、資源が減少していってしまったのです。

「完全養殖」は道半ば

 天然のウナギが減少しているのなら「完全養殖」をすればよいのでは? という考えもあるでしょう。実際に研究が進められています。2010年には完全養殖に成功はしているものの、実用化に向けてはまだ大変難しい状況です。ウナギの稚魚に与える特殊な餌(サメの卵)の供給問題、卵からウナギの稚魚、そして成魚にできる数量は、極めて少ないこと、卵を取り出す親は、養殖した親の90%以上がオスになっており、メスの比率が低いことなど、解決しなければならない問題はたくさんあります。その解決にかかる時間、そして産業として確立するまでには、何年かかるのかわからない状況です。

 2016年までにシラスウナギを1万尾生産できる技術を作るというのが現在のプロジェクトですが、日本で1年間に必要なシラスウナギは約1億尾ですので、天然のシラスウナギを守ることが、まだまだ最重要なのです。

水産資源管理の重要さを、映像等を通じて啓蒙しているシーフードスマート(生田よしかつ・小倉淳の両氏主催)のサイトで、ウナギの話が、下記で連載中ですので、興味のある方はご覧になってください。
https://www.youtube.com/watch?v=NwWGc2bZDig
https://www.youtube.com/watch?v=TiocJxerjmg


【編集部より】Wedge8月号特集「魚を獲り尽くす日本人  資源管理で漁業は成長産業になる」でも片野さんにご寄稿いただいています。詳細はこちら

*2ページ目のグラフの説明について、国内のウナギ稚魚採捕量が発表されたため、より正確な表現に修正致しました。(2014/7/25 19:42 編集部)



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