2024年4月19日(金)

メディアから読むロシア

2014年7月25日

「北極のNATO」形成?

 北極問題アカデミー総裁のレオニード・イワショフ大将(退役)によれば、北極方面は以前にも増してロシアにとって危険になっている。

「そこ(訳者注:北極)では強力な脅威が生まれつつある。アメリカ人は北極対応型の強力な兵器システムを開発し、部隊を配備し、イギリス、カナダ、ノルウェーなどとともに“北極のNATO”を形成している」と彼はノーヴォスチ通信に対して語った。

 また、同人によれば、西側諸国は大陸棚と北方航路に対するロシアの主張を認めていない。

 「彼らは、ロシアが自国に属すると主張する北方航路と隣接海域を国際海域と見なしている。したがって、北極と生物資源を巡って深刻な軍事的対立が生じうる」とこの専門家は予測する。

 彼によれば、ロシア政府指導部には「このような状況に対する脅威認識が生まれており、このため、(北極)総司令部を設立し、我が国のプレゼンスを展開するのだ」という。

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【解説】

 以上に見られるように、ロシアの国防・安全保障関係者は北極における膨大な資源や航路としての有望性が、アメリカとの対立に繋がるとの見解を示している。実際、ロシアはこれまで北極海の大陸棚における排他的経済水域(EEZ)の設定を巡って米国やカナダと競争を繰り広げており、2007年には潜水調査船が海底にチタン製ロシア国旗を立てた際には国際的な非難を呼んだ。

 また、北極海は米露の戦略ミサイル原潜や戦略爆撃機のパトロール地域でもある。

 だが、イワショフ総裁(ロシアきっての対米強硬派として知られる)が指摘するような、北極におけるロシア包囲網といった認識は明らかに被害妄想か、さもなくば誇張である。たしかに北極海沿岸諸国は一定の軍事力を北極に展開しつつあるが、その規模は大きなものではないし、攻撃的なものでもない。現実的にも、西側諸国が北極海の資源を狙ってロシアに対して軍事侵攻を行うとは考えにくい。


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