WEDGE REPORT

2014年8月1日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 このような製品を、既存のビデオカメラを起点にして引き算で考え出すことは非常に難しい。どうしても、せっかく持っている技術だから活用しないのはもったいない、使われないかもしれない機能でも入れておいても邪魔にはならないだろうと考えてしまう。さらに、他社の競合商品と機能を比べた星取り表で負けてしまうという不安をぬぐい去ることができない。機能が少なければいいということではない。余計な機能がついていないということが、これまでになかった新しいコンセプトを際立たせるために重要なのだ。それによってユーザーはそれが何のためのモノであるかを理解することができ、自分にとってどのような価値をもたらしてくれるかを容易にイメージすることができる。

 いったんモノの事業化に成功すると、どうしてもその事業の成長のための「モノづくり」に集中し、組織やプロセスをモノの性能と効率の向上のために最適化して、目先の顧客視点や顧客ニーズによるマーケットインに頼ったバリューチェインを構築してしまう。これはクレイトン・M・クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』で言っていることだ。目先の顧客視点や顧客ニーズからは、ゴープロという発想は生まれてこない。

あなたの顧客が諦めていることを理解する

 B・J・パイン、J・H・ギルモアの『経験経済』に「顧客の諦め」という言葉がでてくる。顧客が諦めていることを理解すると、いま顧客が受け入れていることと本当に必要としていることとのギャップが見えてくるという。あなたの顧客が諦めていることは実はあなたもまだ気付いていないか、あるいは実現が不可能だとこれまで諦めていたことであるかもしれない。

 ビデオカメラが売れなくなってしまったのは、動画を撮影することができるデジタルカメラやスマートフォンが普及したからではない。動画を撮影するという基本的なニーズがなくなったからでもない。それどころか、人々は以前にも増して気軽に動画を撮影し、インターネットの動画共有サイトに投稿して楽しむようになった。既存のビデオカメラメーカーは競合との顧客不在の高機能化競争にかまけて、自分の顧客が諦めていることを理解しそれを解決しようとする努力を怠っていた。サーフィンのすごい映像を撮りたいと思いながら諦めていた顧客を理解することができなかった。

サーフィンの最中に自らを撮影するウッドマン氏。ユーザーが利用シーンを拡げていく

 あなたの顧客も自分が本当に必要としていること、すなわち潜在的なニーズが何であるかを知らないかもしれない。それはあなたが、それを満たすことができる新しいモノを提供してから「これが欲しかったんだ」と初めて知ることになる。顧客が諦めていることを理解するためには、あなたが提供するモノを使う顧客の基本的なニーズに立ち戻り、それをもういちど徹底的に分析し顧客の行動を先入観を捨てて観察する必要がある。

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