科学で斬るスポーツ

2014年7月28日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 世界が熱狂したサッカーのFIFAワールドカップ(W杯)ブラジル大会は、ドイツが高い組織力を駆使したパスサッカーを見せ、優勝した。メッシという突出した選手を抱えたアルゼンチンも善戦したが、あと一歩及ばなかった。総ゴール数がフランス大会(1998年)と並ぶ最高の171点を数え、終盤まで目が離せない、見応えのある質の高い試合が多かった。公式球「ブラズーカ」が扱いやすかったということもあるだろう。ザック・ジャパンは残念ながら2敗1分と不本意な成績に終わったが、実力は着実に進歩している。敗北は日本が躍進するための教訓を得た場と前向きにとらえたい。大事なのは、貴重な経験を科学的に分析し、何が足りなかったのか、それは克服できるのかを考えることにある。ドイツの強さを分析しながら日本の行く道を展望する。

ドイツの強さは、エリア内の確実なシュート

 24年ぶりに優勝したドイツ(前回優勝時は西ドイツ)の強さを示すデータをまず見てみよう。国際サッカー連盟(FIFA)が、ホームページで公表しているブラジル大会の各国データを多少加工してまとめたものだ。上位4チームと日本、日本と同じCグループ1位通過のコロンビアを比較してみた。

 まず気づくのは、ドイツのパス数の多さだ。W杯出場32チームの1試合当たり平均のパス数(失敗も含む)が519本であることを考慮すると群を抜く。成功率も極めて高い。つまりボールを保持している「ポゼッション」(支配率)の高いサッカー、つまり他を寄せ付けない「パスサッカー」だったことがわかる。実際、決勝戦におけるドイツのパス数は736本で、416本のアルゼンチンを300本も上回った。ポゼッションも60%を超えていた。ただ、パスワークだけを評価するのは実態を見誤る。大事なのは、どれだけ相手エリアで、柔軟なパスワークを通じて、ディフェンスを翻弄し、確実に得点に結びつけたかにある。

 それを示す興味深いデータが次の表である。

 ドイツの総シュート数は98本、1試合平均14本。メッシのアルゼンチン、ネイマールのブラジルに比べて少ないが、その正確性は極めて高い。14本のうち10本はゴールの枠をとらえ、7本はペナルティーエリア内からシュートしている。全シュートの半分がエリア内からという計算だ。W杯における得点の80%以上が、このペナルティーエリア内からシュートで決まっているとされ、むやみやたらにシュートを狙わずに、確実に点をとれる場所に踏み込み、シュートしていることが伺える。それが7試合18点という得点につながっている。相手にクリアされても、次から次へと選手が上がってきて、シュートしているという側面も見逃せない。

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