2024年4月25日(木)

科学で斬るスポーツ

2014年7月28日

初戦がすべてだった日本

 ここからはザック・ジャパンに視線を向けたい。3試合を見た感想は、昨年8月に、FIFAコンフェデレーションズカップでの惨敗を踏まえて書いた「ザック・ジャパンの『3つの弱点』」で紹介した内容と共通点は多い。

 簡単に言えば、守備に不安が大きく、守備から攻めへの展開が遅いことだ。パス数は確かに、前回の南アフリカ大会より増えたが、パス出しの意図がわからない、つまり意味がない、相手を動かさないパスが多かった。パスを受けた選手もどうしていいか分からず、とまどっているように見えた。

 川本准教授は「前回大会よりパスワークは増えた。しかし、個人でゴールエリア内に斬り込んでいけるドリブラーがいなかった。シュート数は増えたが、ゴールから遠いところからしか蹴れなかった。得点できなかった要因」と指摘する。さきほども触れたが、図2のエリア内から枠をとらえたシュートの少なさがそれを如実に物語る。

 2010年の南アフリカ大会に向け、オシム監督は「人もボールも動くサッカー」を目指したが、道半ばで倒れ、実戦の指揮は岡田武史氏に引き継いだ。堅守速攻のスタイルに持ち込み、当初の予想を覆し、16強に進んだ。後を継いだザッケローニ監督は「エネルギッシュなサッカー」をうたい、ボールのポゼッションを高めた攻撃型のサッカーを目指してきた。

 しかし、ブラジルW杯ではそれができなかった。これもさまざまな要因が考えられる。

 波に乗れなかった最大の要因は、初戦のコートジボワール戦で、勝てなかったことだ。高温多湿、雨という最悪の環境の中で、攻めの気持ちを持てなかったことが大きい。前線でプレスをかけ、相手陣形を崩す本来の姿が影をひそめ、動きが鈍かった。試合直前の練習の疲れが残るなどコンディショニングの失敗があったとも言われる。試合では、後半のバテに備え、体力を温存しようと、守りに入っていたのかもしれない。

 試合は、相手のポゼッションが高く、なかなか波に乗れなかったにもかかわらず、前半16分、本田圭佑のゴールで先制し、最高の展開となった。しかし、攻めの動きは見られず、後半17分、FWドログバが投入されると、流れは大きく変わった。雨で相当の疲労があったのだろう。気持ちは守りに入り、ドログバにディフェンス陣は目を奪われ、スペースを空けてしまった。そこを狙われ、わずか2分後の19分、さらにその2分後の21分に立て続けに失点。もう攻める体力はなかった。

 やはり高温多湿、さらに雨で滑りやすいピッチに対する備えがなかったことが大きい。今回は熱中症予防の観点からW杯では初めて給水タイムがとられた(オランダ-メキシコ戦)。前回の大会に強みだと言われた持久力を見せる場が少なかった。選手らに過信があったのだろう。実際、練習の時も「走るべき時に走ってない。緩慢な姿勢が見られた」と指摘されている。


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