食の安全 常識・非常識

2014年8月11日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。「第三者委員会報告書格付け委員会」にも加わり、企業の第三者報告書にも目を光らせている。

作業工程。野菜をブランチングした後に冷凍する。虫や石などの異物は人の手で取り除く。この工場では、微生物の混入を防ぐための高度な衛生管理が行われており、自然解凍で食べられる。生産のほぼ100%が日本向けだった。私自身がさまざまな工程を見せてもらったが、視察や監査の時だけの衛生管理ではなく、日頃から厳しく取り組んでいることが見て取れ、日本の多くの工場よりもはるかにレベルは高かった。

 したがって、中国でも日本の農薬取締法や食品衛生法を守って作ってもらおう、と考えるのが、日本のメーカーや商社にとっては当たり前のことです。

 日本の輸入検疫は、違反が見つかると輸入事業者の名前が即座にウェブサイトで公表され、報道されてしまいます。大手商社もメーカーも、どんなに微々たる基準超過であったとしても、公表されます。社会的な制裁の程度が高いのです。実は、国産食品はそのあたりが緩くて、検査数は輸入食品に比べて圧倒的に少ないですし、検査で違反が見つかっても生産者名やJA等が明らかにならないケースも間々あるのです。

 それはともかく、輸入食品を扱う日本のメーカーや商社は、違反を出してしまうと自分達がダメージを受け、社会的な信用を落とし経営リスクまで出てきてしまうので、海外での生産には注意し、指導や監視を手厚く重ねているのが実情です。作業マニュアルを守らせることは当然ですが、工場で着替えや作業着の身につけ方、手洗いの仕方から、繰り返し何度も教えます。

 中国批判の週刊誌記事等では、中国の衛生管理レベルがいかに低く、また、不正がまかり通っているかを書き、だから「日本に入ってくる中国産は危ない」と主張するわけですが、そこが実際とはずれています。日本の企業の多くは、自分達の立場を守るために、必死になって中国を指導して、日本の法律を守って作られた食品を輸入しているのです。

中国の違反数は多いが、輸入件数も多い
数字のトリックにダマされるな!

 データを基に説明すると、厚生労働省の輸入検査では、中国産の違反件数は1位。週刊誌等は、これらの違反事例をずらりと並べて「中国産はこんなに危ない」と報じます。でも、これは数字のトリック。2012年度、中国産は、日本に入ってくる輸入食品の件数の29.8%を占めました。2位はアメリカの10.7%ですから、圧倒的に多いのです。そして、中国産の15%が検査され、違反件数は221件。アメリカ産の10%が検査されて、違反件数は190件。たしかに、違反件数は中国が多いのですが、違反率はアメリカが高いのです。

厚生労働省の2012年度輸入統計から作成。中国からの輸入は全数量の3割を占めるが、違反率は各国平均よりも低い。しかも、年々下がっており、安全管理が向上していることを示している。 拡大画像表示

 グラフを見ればわかるとおり、各国の違反率にそれほど大きな変化がない一方、中国産の違反率は年々下がり、今では平均を大きく下回っています。違反の中身を見ても他国と同様、軽微な違反が主です。これは、日本の関係者と、そのアドバイスを受けて生産する中国の人たちの努力の成果だと私は思います。

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