2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年8月21日

 かつて米ソ間に存在したように、軍と軍の間にホットラインを設定し、危機的状況下において、軍の指導者たちが迅速に対話できるようにすることが必要である。海軍のみならず、海上警備隊同士、あるいは商船などの間でも対話のホットラインが設定されるのが望ましい。

 お互いに艦船同士があまりに接近しすぎないようにしたり、空母や潜水艦の行動についても最小限の合意事項が守られるようにしたりすべきだ。そして、米中間で、双方がこれ以上は許容できないという限界点(レッドライン)をはっきりさせることが必要である、と論じています。

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 スタインバーグとオハンロンがかつて米ソ間で維持されたようなホットラインを米中双方の軍首脳間でも設定すべきである、と主張しています。危機管理のためにこのようなメカニズムが米中間に早期に設定されることが好ましいことは言うまでもありません。同様に、日中間においても政治レベルで危機管理のメカニズムが設定されることが期待されます。

 今日、米中間に存在する政治の首脳レベルのホットラインがどの程度有効に機能しているのか、実態については詳らかにされていません。しかし、習近平体制下の中国において、中国軍の発言力が相対的に強まりつつある現状においては、米中の軍同士の間で対話のメカニズムを持つ必要性がさらに強まっていると考えられます。そのことを如実に示した一例は、先日のシンガポールのシャングリラ会議において解放軍代表が行った南シナ海についての強硬な発言です。

 ただし、このような対話のメカニズムを設定することについて、中国が否定的態度を示していることこそ問題だと思います。最近の中国の対外態度、なかんずく東シナ海、南シナ海における領有権主張においては、「法の支配」を無視した一方的かつ独善的傾向がますます強まっています。 

 米国としては、「アジアへの回帰政策」という一般論だけではなく、許容できる限界点(レッドライン)を、中国に対し、具体的かつ明示的に示すことが急務となりつつあります。

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