2024年4月20日(土)

研究と本とわたし

2014年8月27日

 ぼくがいま研究しているのはホモ・サピエンス(現生人類[=私たち]の学名。賢い人、の意)になっていく過程ですが、この本にはホモ・サピエンスになってからの、日本の古代から現代までを「骨」でたどっていく話が書かれています。スケールが大きく、日本の縄文・弥生時代から現代までを貫いて人骨の変化を追えるというのが驚きでした。

 著者の鈴木尚先生(人類学者。1912~2004)は、ご自身で収集した膨大な資料をもとに本書の内容を構築していて、ちょっと圧倒されましたね。実はこの資料があるおかげで、ぼくらはいま研究ができているんです。

──そして人類学へ進もうと決断するわけですね。

海部氏:はい。ちょうどその頃に『ルーシー:謎の女性と人類の変化』(ドナルド・C・ジョハンソンほか著、1986)と出会ったんです。アフリカで行われている人類の祖先の調査の様子がすごく生々しく描かれていて、具体的なイメージを掴めたので、「これだな!」と。『日本人の骨』と『ルーシー』は、進路を決める大きなきっかけになりましたね。

 1974年にエチオピアでルーシー(320万年前の猿人の女性の化石)を発見したドナルド・ジョハンソンら、ここで活躍していたのは、博士号を取得したばかりの若い人類学者あるいは大学院生たち。若い世代がアフリカというフィールドに出て、自分たちの手でチャンスをものにしていく。研究者を目指す者にとって、大いに参考になりましたね。

(左から時計回りに)『キネズミさんからヒトがでる』、『日本人の骨』、『ルーシー:謎の女性と人類の変化』

──人類学というのは、どうやらとても広く深い分野のようですが……。

海部氏:おっしゃる通り、人類学って得体がしれないところがあるんです (笑)。人間は生物学的存在であると同時に文化的存在でもあるわけです。人類史において、文化を切り離して考えることはできませんから。


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