科学で斬るスポーツ

2014年8月21日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

投げ過ぎの基準は球数以外にも、
強度やフォームも考慮

 馬見塚さんがもう一つ警鐘を鳴らすのは、「投げ過ぎが球数だけで考慮されている野球界を取り巻く空気」だ。大リーグでは先発投手の交代の目安は100球。青少年も「1試合75球以下、1シーズン600球」を推奨する野球ガイドラインがあるが、野球肘などの障害防止の特効薬にはなっていない。

 日本でも同様の興味深いデータがある。小学生の投手149人を対象に、1年間追跡した調査で、1日50球以上投げていた62人中42人(66.1%)が肘などの障害が発生した。一方、50球以下の障害発生は少なくなったものの87人中25人(28.7%)が発症している。このことは「肘痛の減少に球数を抑えることは有効だが、球数を少なくしても、約30%が肘痛を発症していることは、投球数制限だけでは十分ではないことを示している」(馬見塚さん)。

 では、何が重要かと言えば、投球の強度とフォームという。全力投球は肘に負担がかかることをこどもたちに教えることはとても大事である。そしてその指導は決して将来の投球スピードを減らすものではないことを知ることである。じっくり成長を待つことが大切だ。

 また、ストレートの肘への負担を100とすると、カーブは91、チェンジアップは83と適切な指導を受けた場合変化球は決して負担の多い球種ではない。「学童野球ではチェンジアップなどを許可し、指導者講習会などで指導者に指導法を学んでいただくことも大事だ」と馬見塚さんは強調する。

 もう一つは、肘や肩に負担の少ないフォームを身につけることだ。フォームが身についていないと、球数が増え、疲労がたまると投げ方が悪くなりがちだ。年齢に応じた筋力とスタミナをつけないと、フォームを修正しても昔の癖が抜けきらないことがある。

 田中投手らが大リーグで活躍することは、未来を担う少年たちにも大きな夢となる。今後、田中投手が、どう障害を克服し、試合に復帰できるか。田中投手の一挙手一投足には注目が集まるが、今回のDL入りは、日本、アメリカのプロ、アマチュア、ジュニアを超えて、改めて野球を冷静に見直す良い機会を与えてくれた。科学的に野球をすることの大切さだ。

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