チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年8月25日

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 こうした中で、大きな災いはやがて、中国に進出している多くの日系企業にも降り掛かってきた。8月20日、中国の独占禁止法当局が日本の自動車部品メーカー12社に独禁法違反があったと認定し、10社に合計12億3500万元(約200億円)の制裁金を支払うよう命じた。価格カルテルを結ぶなど業界ぐるみで自動車部品の価格をつり上げる不正行為があったとの理由であるが、それらの日系企業が一体どのような不正行為を行ったか具体的なことはまったく不明で、中国当局が恣意的に断定しただけのことである。その一方、当局はさらにトヨタなど完成車大手に対しても輸入車や補修部品の価格を不正につり上げているとの疑いで調査を進めているという。

 以上が7月20日から8月20日までのわずか1カ月間における中国政府の外資たたきの全容である。人々の生活と密接していて関心の高い食品生産分野での外資企業の不正摘発から着手し、「外資が悪い」という世論を国内で醸し出した上で、間髪を容れず自動車メーカーなどの外資企業に対して「本丸攻め」を始めたわけである。その一連の動きはどう考えても、中国共産党政権の主導下で展開されており、共産党政権の用意周到さと戦略の巧妙さを存分に示した計画的な作戦であろう。どうやら彼らは、外資企業に対するスケールの大きな包囲戦を既に始めているのである。

「新しい闘争を深く理解せよ」

 ではなぜ今この時期になって、共産党政権は一体何のために、どのような思惑を持って、外資企業に対してこれほどの大掛かりな作戦を開始することになったのか、その真意は一体何であるのか。実は、その謎を解く鍵の一つは、ちょうど作戦開始の7月下旬に人民日報に掲載された一通の重要論文にあるのである。

 7月23日、すなわち例の上海福喜食品の関係者5名が上海警察に拘束されたその日、中国共産党機関紙の人民日報は共産党中央党校韓慶祥副学長の論文を掲載した。「新しい闘争を深く理解せよ」と題するものである。

 共産党中央党校といえば、その名の通り、中国共産党の高級幹部の養成・研修を担当する党の「最高学校」である一方、党の政策方針を裏付けるための理論武装を整えるための党の最高理論機関としての役割をも担っている。昔の毛沢東主席や今の習近平主席もこの中央党校の「学長」を務めたことがあるから、その役割と地位の高さがうかがえる。

 前述の韓慶祥氏は中央党校の筆頭副学長である。名義上の学長は政治局常務委員の劉雲山氏が兼任しているから、韓氏は実質上の「学長」となっている。つまりこの韓氏の立場は、中国共産党政権の最高の理論的権威、あるいは共産党の理論武装の最高責任者、ということである。

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