2024年4月18日(木)

Wedge REPORT

2014年9月4日

中堅サラリーマンには郊外でも手が出せない

 となれば、どうなるか。不動産経済研究所が今年、首都圏のマンション供給戸数を5万6000戸と予想した時には都心の好立地物件がけん引すると見立てていた。しかし、そのけん引役が失速、達成は一気に難しくなりつつある。

 もちろん、都心がダメでも郊外が堅調なら望みはある。だが、「郊外は都心とは比べようもないほど惨憺たる状況」(トータルブレイン)にあるのだという。

 理由は簡単だ。建築費の高騰が郊外物件を直撃、湾岸エリア同様、郊外物件の場合、土地代の割合が低く、その分、上物であるマンションの価格が占める割合が高い。ものによっては全体の6~7割にもなる。この上物に含まれる建築費が上昇するため、郊外で建築費が高騰すると物件の販売価格を引き上げることになる。都心の物件に比べて、上昇の変化率が大きいわけだ。

 もともと、郊外物件には投資ファンドはもちろん、年収1000万円を超えるアッパーサラリーマンは手を出さない。一方で主力の購買層である年収500万~600万円の中堅サラリーマンでは物件価格の上昇に対する許容度が低く、とてもついて行けない。このため建築費の高騰でマンション価格が上がると郊外では買い手が全くいなくなる現象が発生する。

 最近、郊外ではデベロッパーがマンションを建設しようと1~2年前に土地を仕込み、「さあ、建設だ」という段になって着工をあきらめるケースも急増しているという。土地を買った時点に比べ建築費が10~20%も上がったため、とても利益がでる状況ではなくなったからだ。景気は回復、給与や賞与が上がってきたというものの、その恩恵をこうむる優良企業のサラリーマンは郊外には少なく、価格の上昇は受け入れられない。かくして、マンション市況は今、再び曲がり角にさしかかりつつある。

 ◆Wedge2014年9月号より









 

  


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