2024年4月20日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年6月24日

 Picasso didn’t renew himself by abandoning painting and sculpture to become a novelist or a banker; he painted his entire life yet progressed through distinct creative phases---from his Blue Period to cubism to surrealism――within his primary activity. (p36)

 「画家のピカソは、絵や彫刻を投げ出して小説家や銀行マンになることで新味を出そうなどということはしなかった。活動を自分の本業の分野に限定し、生涯にわたって描き続けた。なおかつ、(初期の)『青の時代』からキュビズムへ、そしてシュールレアリズムへと同時に画風も進歩し続けた」

成功すると無駄遣いしたがる

 やみくもな拡大戦略に走るステージ2については、イノベーションが少ないがために会社が駄目になるわけではない、という意外な発見も披露する。実際、モトローラやメルク、ヒューレット・パッカード(HP)の特許申請件数などは、経営が悪化する局面では大幅に増えていたという。コリンズはそこで、Packard’s Law(パッカードの法則)を紹介する。

 We named this law after David Packard, cofounder of HP, inspired by his insight that a great company is more likely to die of indigestion from too much opportunity than starvation from too little. (p55)

 「HPの共同創業者であるデイビッド・パッカードにちなんで名づけた法則だ。パッカードによれば、偉大な会社はチャンスがなさ過ぎて餓死するよりも、チャンスがありすぎて消化不良を起こして倒れることの方が多い」

 成功して余力が出た会社は、その余力ゆえに経営目標が拡散して経営資源の無駄遣いにつながりやすいということだろう。

 さらに、リスクを軽視し経営の危険度が増すステージ3の状態に会社が陥っていないかどうかを見分けるポイントについては次のような記述がある。

 For businesses, our analysis suggests that any deterioration in gross margins, current ratio, or debt-to-equity ratio indicates an impending storm. (p76)

 「粗利益率が落ちたり、流動比率が低下したり、デット・エクイティ・レシオが悪化した場合には、嵐が迫っている可能性がある」

組織改正は悪化の兆候

 ステージ3でみられる、会社の経営が悪化する兆候の重要な一例として、組織改正へのこだわりをあげている点も見逃せない。実例として、紙ナプキンやティッシュペーパーなど消費者向け紙製品で1960年代初めに、世界市場を席巻していたスコット・ペーパーの戦略ミスの事例が出てくる。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などライバル各社が台頭してきたのに対し、マーケティング部門などの組織改正に走るだけで有効な戦略を打ち出せず、市場シェアを落とした。次の一節は、組織改正が好きな日本の経営者には耳が痛いだろう。


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