2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月9日

 もしNATOとロシアがこういう方向に事態を動かすようにしなければ、状況に流され、諸国の運命は良い判断より偶然に左右されかねない、と警告しています。

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 この論説は、ロシアの元外相及び英国の元外相という重鎮によって書かれたものです。しかし、現在の危機を収める、または暴走させないという点に注意が向き過ぎていて、現在の危機をもたらしているロシアの責任を不問に付しています。ロシア元外相が筆者の一人でもあるので仕方のないことかもしれませんが、それが対ロ宥和論になってしまっています。

 物事を考える際に、誰の責任で今の状況が生じているのかをはっきりさせないと解決策も見えません。お互いに正義を主張し非難合戦をすることが不毛な場合もよくありますが、正邪を明瞭にすべきケースもあります。今回のケースについては、ロシアに責任があることは明らかです。それを不問にし、お互い政治的にも自制せよと言うような意見は、対ロ制裁はやめた方がいいという意見につながるもので、到底受け入れられません。

 ヘルシンキ最終文書への違反があったことは明瞭で、クリミア併合はウクライナの領土一体性への侵害となります。

 旧ソ連や北朝鮮など共産主義国は自分で緊張を高め、その緩和のために相手に代償を払わせることを常套手段にして来ました。この戦術は割に効果のあるものでした。この論説も、そういう戦術をロシアが使っているのに乗せられたもののように思えます。

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