2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月11日

 冷戦時代の教訓も学ぶ必要がある。どんな技術的優位も完全な脆弱性克服をもたらさず、経済的、政治的措置、軍事プレゼンスが有効であった。航行の自由や同盟のコミットメントを守るために、対中国攻撃能力に頼ると、中国の指導者が尖閣諸島のためにロサンゼルスを犠牲にする用意を試しかねない。

 もっとバランスの取れた米戦略は、決意と保証を組み合わせたものであるべきで、それが中国の指導者に地域の領土問題でより協力的姿勢を取らせる最善の策である、と論じています。

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 この論説は、筆者二人の著書“Reassurance and Resolve in East Asia”の核心を紹介したものです。

 中国の軍事的台頭、特にそのA2AD能力の拡充を受けて、どう対処すべきか、米国内で諸議論があります。両名は、いわゆるエア・シー・バトルについて、紛争の初期段階で大規模エスカレーションを想定し、米本土からの長距離打撃力で中国本土の軍事施設を破壊する計画であり、危険な構想であるとして、批判しています。確かに、エスカレーションのはしごを駈け上るような構想で、両名の指摘は的を射ています。軍事紛争のエスカレーションをどうコントロールするかは難しい問題ですが、エスカレーションのはしごの段数は多いほど、途中で登るのをやめたり下りたりできるので、費用はかかりますが、そうしておくべきでしょう。

 米本土からの攻撃との発想は、中国に近い基地は脆弱であるからという発想から来ます。この考え方は、狭い軍事戦略的には成り立ちます。オフショア・バランス論もその系統に属します。しかし、これはFortress America(アメリカ要塞)の発想につながり、米国の最大の強みである広範な同盟網を弱めることにつながります。その損失は計り知れません。危なくても中国近傍に前進配備することが肝要です。

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