2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月15日

 中国経済が崩壊すれば、西太平洋における脅威は軽減されるが、それと同時にアジアと世界の経済は混乱に陥ることとなる。単純に言えば、世界はより不安定になるのである。今日の海洋における緊張は、中国経済が脆弱化したときに起きることと比べればマシな状況と言える、と論じています。

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 ロバート・カプランは、事象を少ない変数でシンプルに説明することを好む人で、それが幅広い読者層の人気を得ていますが、その反面、「ではどうすればよいのか」という具体的な政策論にはあまり踏み込むことがありません。

 この論説も、長期的な中国経済の停滞の見通しと、南シナ海、東シナ海における中国の進出を現在直面する最大の問題と捉えながら、その両者の間の整理について、色々と言葉を費やしつつ、結局は、それにどう対応すべきかという政策の提示はありません。

 結論らしきものがあるとすれば、中国経済の崩壊が世界に及ぼす影響の大きさを考えれば、現在程度の海洋における脅威のほうがマシではないかということです。しかし、経済と政治、安全保障との関係については、おそらく、経済と政治は、究極的には無関係であろうと思います。そして、日本が直面している問題は、将来の中国経済の衰退ではなく、今後10年間を考えて、過去20年間の蓄積で年々巨大化しつつあり、それが、今後ともしばらくは6~7%成長でさらに増大していく、巨大中国にいかに立ち向かっていくかということです。カプランの論には、到底、与することは出来ません。

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