オトナの教養 週末の一冊

2014年10月3日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 日本の人口をとりまく状況はどうなっているのか。本書から拾いだしてみると以下のような印象的なデータが出てくる。

・日本の人口は2008年をピークに減少に転換している。推計では2050年に9708万人になる。
・20013年に出生率は1.43にやや上昇しているが、しかし出生率は約102万9800人で減少が続いている。
・都道府県別の合計特殊出生率で最高は沖縄の1.94、東京は1.13と際だって低い。

 などだ。

 こうしたことをふまえて本書は少子化対策と東京一極集中対策を同時に行う必要があると指摘。そのためには、金融政策や経済政策といった「マクロ政策」だけでは不十分で、さらにこれまでのような「地方分権論」を超えた議論が必要であるとして、国家戦略が必要であると強調する。具体的には、国に「中央司令塔」にあたる組織を置くほか、広域ブロック単位で「地方司令塔」となる組織を置くことが重要であるとしている。

 地方からの人口流出を食い止めるために、地方中核都市が「最後の踏ん張り所」にならないといけないという主張にもうなずかされる。そのために地方の公立学校での教育の充実や、中高年の地方移住の支援、地域金融の再構築、農林水産業の再生などを訴える。

 また国民のレベルでは、安心して子育てできるような環境をつくるために、結婚、妊娠、出産、子育てに対する積極的な支援の必要性とともに、長時間労働の是正など企業における働き方の是正・改革なども指摘する。

世の中が現実を冷静に受け止めた

 これら一つ一つの施策を充実させることも重要だが、異なる政策を同時並行で進めてゆかなければならないという点で従来型のアプローチでは難しい。しかし手をこまねいていては日本の人口は減少する一方であるし、一定水準を維持するのも時間がかかる問題である。必要な対策をしっかりとるためには政治的な強いリーダーシップが不可欠であるし、経済社会全体が足並みをそろえることも大切だ。政府が掲げる「50年後も人口1億人程度維持」という目標の達成は、よほど腰をすえてかからないと容易なものではないということは本書を通読するとたちどころにわかる。

 本書に説得力を持たせているのは、増田氏が3期12年、岩手県知事を務めた後、二つの内閣で総務大臣をやり、国と地方の事情に精通しているからだ。ゆえに本書での提案も具体的で緻密なものになっている。本書の「おわりに」で、増田氏が「消滅」という言葉を使ってきたことについて「きわめて冷静に受け止めていただいた」と書いているように、地方が消滅しかねない事実を世の中が現実のものとして理解し始めているのは一つの確認であり、貴重な一歩だろう。ここで踏ん張ってしっかりした対策をとらないと、いずれ国家が消滅しかねない危機に突入するかもしれず、そうなった時では遅いのである。一人でも多くの国や地方の政策担当者、そして多くの国民に一読を勧めたい本である。

[特集]地域再生の厳しい現実

  

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る