世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月2日

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 米AEI日本研究部長のオースリンが、8月28日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説で、南シナ海における中国軍機による米海軍偵察機への異常接近は、米軍のアジア太平洋におけるプレゼンスの重要性を改めて示すものである、と述べています。

 すなわち、北京が7月にRIMPAC演習に招かれざるスパイ船を送り込んだことに、米海軍当局者は、北京の動きは、中国がEEZ内での軍事活動を容認するという国際規範を受け入れる兆候ではないかとの期待を表明した(注:中国艦船はハワイ沖の米EEZ内で情報収集活動を行っていた)が、中国側は、すぐに米国のそういう考えを打ち砕いた。8月には、海南島の東約135マイルの領海外の上空において、中国のJ-11戦闘機が、米海軍のP-8偵察機に20フィートの距離まで無謀に接近した。中国軍のスポークスマンは、今回の接近への米国の批判に反論し、中国の領域近くでの全ての哨戒活動を止めるよう米側に求めた。

 異常接近事件は、米軍のアジアにおけるプレゼンスの重要性についての教訓となる。潜在的に不安定な地域に、効果的で信頼できる米軍が不在であることは、ISISのような殺人的グループ、プーチンのような伝統的な攻撃的機会主義者を元気づけ、グローバルな不安定を助長する。アジアは、世界の他の地域に比べて相対的に安定しているように見える。最近の中国の攻撃性さえ、太平洋の海空における米国のプレゼンスにより、明らかに緩和されている。

 これまでのところ、米国防総省は、アジアにおける米軍兵力を維持し、控え目ながら増強しようとさえしている。米国はアジアにF-22のような最先端の兵器を展開し、今後、F-35やズムウォルト級DDG-1000駆逐艦などによって、米太平洋軍を強化することを約束している。こうしたこととアジアへのリバランスというレトリックが相俟って、北京の冒険主義をある程度抑止してきた。

 アジア駐留の米軍が、今後10年、他の地域で必要とされたり、予算削減のために漸減されたりすれば、中東と東欧を危険にさらしている力の真空がアジアにも発生し、中国の行動はより攻撃的になろう。中国は、米軍を脅迫し邪魔し、領土問題で、日本、フィリピン、ベトナムなどに、より直接的な対決を挑むであろう。

 危機解決のための効果的な地域的メカニズムが無いので、ナショナリズム、怒り、不信感が高まっている中で、安定を保つことは困難となる。東南アジア諸国の安全保障上のパートナーとして行動しようとする日本の目標さえ、中国との直接的紛争に引きずり込まれる恐れから崩壊するであろう。

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