対談

2014年10月2日

飯田:学歴そのものというよりもその都市が稼げる都市か否かの方が収入には有意に影響するというエンリコ・モレッティの指摘がありますが、そのキーになる移住の可能性を高めるのはやはり学歴ではないかと私は考えています。大卒者が少ない地域では、そもそも「大学に行く」という概念が希薄です。これは文化資本の問題ともいえると思いますが、大学に行くカルチャーがなければ、高校受験段階で進学校に行く、行きたいという考え方にも至りにくい。つまりは勉強しなければいけないという空気がないんです。

※エンリコ・モレッティ:労働経済学者。労働人口や投資、雇用の増減に着目し、都市間の格差拡大を分析した『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』(プレジデント社)が大きな話題に。

飯田:先進国に共通の現象として、大卒者の年収はその国の経済成長率とおおむね同じペースで伸びていきます。ところが高卒者の就く仕事の年収はほとんど上がっていない。ただし起業家の年収になると学歴は関係なくなりますが、これも起業というカルチャーがなければ起こらない。

 マーケティング理論では「消費者の選択肢に入る」ということが重視されます。人生においても選択肢に入らない、言い換えれば思い浮かばないものを選ぶことはできないんです。起業することを思い浮かべない人は起業家にはならないし、進学という選択肢が頭から排除されている人は大学には行かない。カルチャーの有無は世代を重ねていくことによって、地域間の格差を拡大させます。いわば国がしだいに分解していくことを意味しています。

Uターン組が役所に就職してしまう

木下:分離していく方向性はすごく強いですね。地域のプロジェクトを我々がやっていても、不幸だなと思うのは、せっかく東京で勉強したり、仕事して地元に戻ってきた大卒者の方が付加価値を生まない側に回ってしまうことがとても多いんです。つまり、役所などの公共セクターで働いてしまう。

飯田:そうですね。大卒で、地方で、雇われるとなると公的セクター以外に選択肢がないに等しいという地域もあります。

木下:そうです。教育を受けている世代は非生産的な地域のコストセンターに回ってしまい、逆に地元に残った選択肢が少ない側の人達のみが、自分でできる範囲の商売をしているという現実もあります。こちらもまた公務員になる層とは大きく乖離しています。結局は高卒でバリバリ店やっているとか、中小企業継いでいる人とかのほうが地方経済を支えていて、高度教育だけは受けた人材が行政で地域経済の重荷になってしまうという地方の構造があるのです。

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