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2014年10月3日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

習近平が「選挙で投票する権利」の重要性に言及

 習近平の重要講話が興味深いのは、協商民主だけでなく、選挙や投票についても言及している点である。習近平は次のように発言している。

「人民が民主の権利を享有するかどうかは、人民が選挙で投票する権利を有するかどうかを見なければならない。また人民が日常の政治生活で持続的に参加できる権利を有するかどうかも見なければならない。人民が民主選挙の権利を行使するかどうかを見なければならない」

「選挙以外の制度と方式を通じて人民の代表を国家生活と社会生活の管理に参加させることも非常に重要である。人民が投票の権利を有するだけでは広範な参加の権利を有するとはいえない。人民が投票時にだけ目覚め、投票後に休眠期に入る。このような民主は形式主義である」

「人民は、選挙、投票を通じて権利を行使すること、人民内部の各方面は重大な決定の前に十分な協商を実行し、共同の問題でできるだけ一致した意見を取得することが、中国の社会主義民主の二つの重要な形式である。中国ではこの二つの民主形式は相互に取って替わる、相互に否定するものではない。相互に補充し、互いに補い合いよい結果となるもので、共同で中国社会主義民主政治の制度の特徴と優勢を構成する」

 習近平は選挙民主という言葉を発してはいない。しかし9月24日付『人民日報』に掲載された関連の評論員文章は次のように指摘している。

「選挙民主と協商民主が相互補充であり、互いに補い合いよい結果となることが、中国の社会主義民主政治の制度の特徴と優勢を共同で構成している」

 この指摘からは、習近平が選挙民主を協商民主のアンチテーゼとは必ずしもとらえていないかのようである。

香港での抗議活動へのメッセージ

 しかし、重要講話の中で習近平は選挙や投票の権利の行使を形式としてとらえており、どのような政策か、どのような候補者かといった選択という機能には言及していない。そのことは、評論員文章の指摘とは異なり、習近平は選挙民主を協商民主のアンチテーゼとして強く意識していることの表れである。

 それならば、なぜ習近平は形式としての選挙や投票の権利に言及したのだろうか。中国国内で選挙をめぐる改革議論が盛り上がっているわけではなく、むしろ政治改革論議に対しては引き締めが強まっている。これまで習近平自身が言及することのなかった選挙、投票の権利への言及は実に不自然なのである。

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