2024年4月24日(水)

対談

2014年10月6日

飯田:僕の友だちも山梨県で会社を経営しているけど、奥さんと娘さんは東京に住んでいます。本人も週の半分くらいは東京にいるようです。そもそも山梨なら通勤できる範囲でもありますしね。

木下:そういう行動形態が普通にある。時間とお金に余裕がある人ほど、そういったライフスタイルになりやすい。「二地域居住」などとしきりに言われていますが、昔からいくらでもあったし、すでにみんながやっていることなんです。地方の経営者層や資産家、いわゆる名士の人たちの往来は本当に活発です。

経済学の立場から都市と地方のあり方を模索する飯田泰之さん

飯田:九州地域の活性化事業に携わっている人たちと打ち合わせをする機会があって、「小倉か博多あたりでやりますか?」と言ったら「いえ、みんなだいたい東京にいますから」という返事でした。誰も九州にいなかった(笑)。

木下:一番集まりやすいのが東京ということは多いです。

飯田:許認可関係も東京に来なければなりませんからね。

木下:東京集中はネガティブに語られやすいですけど、まず「仕事がしやすいから東京にいる」という現実を認めないといけない。

 東京で会う地方の名士の人たちの実家に行くと、古墳みたいなお墓があったりします。どの地域にも一人くらいはスケール感のまったく違う人がいますよね。明治維新で利権が四十七都道府県に分割されて、一県ずつにその利権を継承している人がいる、そんなふうにさえ思えます。そういう人たちは、ちょっと昔までは地元に利益を還元する役割を負っていたはずですが、今はそういう人ほど東京や海外に進出していかざるをえない。そうなると地元への影響力も低下していく。その人への関心もなくなっていくから、「あの人が首をタテに振ればなんとかなる」という存在はどんどん減ってきています。

飯田:「どんな人かは知らないけど、でかい屋敷に住んでいる」くらいの認識になってしまったら、もうダメですよね。

木下:ダメですね。「最後はあの人に」という認識が、地域内でなくなってしまう。企業で言えば、誰が社長なのか、決裁者なのか見えなくなってしまうのと同じです。

飯田:「気が向くと市長を電話で呼びつけて、一緒に昼飯を食べている」みたいなノリの人が残っていれば、いろいろと話は早いのですが、そういう人は少なくなっている。「子どもの頃は飛行機で東京の塾に通っていた」なんて人もいましたからね。

木下:マイルがすごい勢いで貯まりますね(笑)。


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