2024年4月26日(金)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年6月29日

 そうして2、3カ月したら、また会長に呼ばれました。そして、「あのときからいままで、金児君が私と社長と購買部長と話をして、購買行動をこのようにしたという議事録をつくってください」とおっしゃいました。

 そして、「それを、日本と世界の全部の子会社・関連会社に配布しなさい。外の会社から見られてもおかしくないように議事録をつくって、あなたが資材担当=購買担当から実質的に引退したこと、『経理・財務の担当役員には悪いことをしない人を充てている』と私が言ったことも含めて、全部、正直に書いて、それを世界中の全ての子会社・関連会社に配りなさい。親会社のなかでも主要な部門に全部配布しなさい」と。

 それで、世界中のいろいろな国の言葉に訳してもらって、同じものを全世界中の子会社・関連会社に配布しました。こうなると、全企業グループを挙げて、同じような行動をとりなさいと言っているのと同じです。

エンピリカル・ナレッジの重要性

 連結経営の本質はここにあります。これが国際連結経営そのものだと私は思います。口で言う連結経営とか、本で読む連結経営とか、そういうものではありません。グループのみんなが、「ああなるほど、親会社の経理・財務担当役員は、購買部門を実質的に兼務していないんだな」「経理・財務担当役員はまじめな人間しかつけないんだな」とわかります。

 この「わかってしまう」ことが、国際連結経営です。そうなれば事故が起きる率は非常に小さくなります。それが安全性を重視した本当の利益性、成長性です。利益を上げて会社が成長していく、それを重視した上での安全性というのはこういうことから生まれます。

 何かを上からワーっと言うのではなく、下に、すなわち、私みたいな人間にこういう行動をとらせて、議事録をつくらせながら、会社をまとめて、性善説をベースに、全社・全グループの安全性を重視する。これこそが、ほんとうのリスクマネジメントであり、ほんとうの国際連結経営であると私は教えられました。前回と今回の連続した話は、私が真に感動したエンピリカル・ナレッジ(empirical knowledge=体験知識)です。
 

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