2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月17日

 このような結果、国民の間では、環境問題への自覚が高まり、中国政府は、より積極的な対策を取るようになった。今年3月、中国政府は「汚染に対する戦争」を宣言した。1か月後、1989年以来初めて環境保護法が改正され、種々の規制が強化された。主要経済地域での石炭火力発電所の新設が禁止され、2020年までに北京ですべての石炭の使用が禁止されることとなった。政府は、大気汚染の「行動計画」に2770億ドルを、水質汚染の「行動計画」に3330億ドル支出することを決めた。さらに走行する車の数を制限し、排出ガスの規制を強化し、電気自動車、ハイブリッド車の購入に大幅な払い戻しをすることを決めた。

 これらの対策がどれほど有効かは未だ分からないが、中国が大きな努力をしていることに目をつぶるべきでない、と述べています。

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 中国政府がここにきて環境問題に真剣に対処し始めたのは、環境問題が経済的に放置できない問題となったのみならず、公害問題に対する市民の反発が高まり、いまや中国の社会不安の主たる原因となったためです。中国共産党は、その基盤にひびが入らないよう図るため、環境問題に正面から取り組まざるを得なくなったと言ってよいでしょう。

 中国経済が、これまでの高度成長から、より安定的成長にシフトするなかで、環境への取り組みは、短期的には経済成長のマイナス要因となりますが、中国政府に選択の余地は無いと言ってよいでしょう。中国の場合、依然として経済に占める国営企業の比重が大きく、特に環境汚染に関係するエネルギー産業、重工業などではそうです。そのことはかえって、政府による強制的な環境汚染防止策の実施には、妨げとならない可能性があります。

  
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