2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2009年7月7日

 この背景にあるのはオールトヨタを挙げての拡販だ。『プリウス』はこれまでトヨタ系とトヨペット系の専売だったが、3代目の投入を機にトヨタはカローラ系、ネッツ系を加えた全4チャンネル併売に踏み切った。これによって、国内最大の販売網を誇るオールトヨタ5000店舗で扱われることになったのだ。

系列から地域へのトヨタ販売網の再編

 だが、トヨタの決断はこれまで磐石の体制を誇ってきたトヨタの国内販売体制に「一穴を空けたのでは」(自動車販売業界関係者)との見方がないでもない。大手自動車メーカーは70年代以降の国内市場拡大に対応するためトヨタ、日産、マツダが5チャンネル、ホンダが3チャンネル、三菱自動車が2チャンネルと販売網を拡大、それぞれのチャンネルに性格の異なった車種を投入、ユーザーの幅広いニーズに添う体制を構築してきた。だが、90年代半ば以降、市場が収縮する中、「複数チャンネルの維持が困難」(同)となり、まず、マツダと三菱が、次いで日産、ホンダも相次いで全車併売による事実上の1チャンネル化に踏み切ったため、高級車ブランドのレクサスを含む5チャンネル体制を維持しているのはトヨタのみとなったのだ。

 ではトヨタは『プリウス』の全チャンネル併売を機に、国内販売網の再編に動くのだろうか。これについて、次期社長に内定している豊田章男副社長は「(ビスタとネッツを統合して新ネッツとしたような)チャンネルの統合・再編を実施するつもりはない」ときっぱり否定する。

 その理由はトヨタの強みとなっているディーラーの資本関係。トヨタの系列ディーラーは東京都内など一部大都市圏を除く9割がそれぞれ独立した地場資本による経営で、トヨタ本体との直接の資本関係はない。トヨタの意向で合併などを伴う再編などは簡単にはできないのだ。ただ、豊田副社長も国内販売体制について「(地域の実情に沿った)ローカルルールの強化はさらに徹底する」と、付け加えることも忘れない。

 実はその手始めとして、トヨタは株主総会後の新経営体制で国内営業に「地域担当制度」を導入する方針だ。これまで国内営業担当の常務役員はレクサスを含む5チャンネルをそれぞれ担当していたが、「今後はこれに加えて全国を5地域に分割し、地域担当も受け持つようになる」(トヨタ関係者)のだ。

 その狙いはずばり、市場の収縮に対応した販売網の再構築にある。トヨタの国内販売も08年度は134万台とピーク時に比べ半分近くまで減少、「5000店舗のディーラー網維持が困難になっている」(業界筋)。こうした中、考えられるのが市場の規模に合わせ、チャンネルごとの壁を取り払った「共同運営店舗」の開設などだが、実はこうした兆しが地域によっては出始めている。

 例えば北海道では札幌トヨペットとトヨタカローラ札幌という資本関係の異なる2社が夕張地区の由仁町に「同一の共同店舗を開設、それぞれの看板を掲げて営業している」(業界筋)。旧産炭地域で人口減少が続く中、「トヨタ系同士で小さなパイを食い合ってもメリットはない」(同)というのが理由のようだ。


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