2024年4月25日(木)

サイバー空間の権力論

2014年10月14日

 実際、IT企業は社会心理学的な実験を繰り返し、ネットを通じて人間の趣味・嗜好を分析し、それをもってビジネスや政治に活かしてきた。人間の思考がビッグデータによってよりよく理解されれば、この知見は即座に大衆の政治意識の操作に利用される恐れがある。ドローンは広い意味でデータ収集ツールである。デモの現場を撮影し、人々の感情を読み取ることも可能だ。ドローンを経由して多くの人々をネットに接続させれば、そこからより多くの人々の心理を読み取ることも可能だ。人々の心理という内面もまた、ドローンやIT技術が切り開く新しい領域なのである。

 無論第一の目的として、僻地や途上国のネット接続など、物理的な水準で開発されていない領域を、ドローンが開発することは間違いない(実際ドローンは「空」という空間を拡張している)。一方で、広く人間や空間のデータ収集が、ヒトの行動原理を発見し、それがビジネスや政治、ひいては軍事等に幅広く適用されるのも確かだ。したがってドローン開発は、物理的な僻地やサイバー空間に未接続の人々を新たな「フロンティア(新天地)」へと導くとともに、データ収集によってヒトの内的な行動原理を把握し、より深い人間の深層という「フロンティア」へと我々を導くのだ。

 フロンティアに辿りついたとき、我々はどのような境地にたどり着くのだろうか。ヒトの原理がより深く把握され、政治的にも経済的にも技術が我々を理解したとき、我々はどのような未来に導かれるのだろうか。とはいえフロンティアはどこまでも続く。宇宙や海底、さらに深いヒトの深層心理へと、我々の探求は続くだろう。

  
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