WEDGE REPORT

2014年10月24日

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岡本孝司 (おかもと・こうじ)

東京大学大学院工学系研究科教授

1961年生まれ。三菱重工、テキサスA&M大学客員助教授等を経て、2004年より現職。

 大量のプルトニウム処分が問題となっているが、高温ガス炉はこれを燃料にできる。脱原発のリスクは経済的なものが最も大きいが、脱原発後のプルトニウム管理の厄介さも大きなリスクである。これを高温ガス炉で燃やせば、脱原発にも使えるのである。

 さらに、基本的に水を必要としないため、津波のこない内陸部や砂漠にも造ることができる。発熱量が大きくないので、排熱は空気へ逃がすこともできるし、利用して海水淡水化もできる。砂漠に高温ガス炉を設置し、海から海水パイプラインを引けば、砂漠を広大な緑地に変えることも可能となる。

 トリウム溶融塩炉は、溶融塩と呼ばれる数百度で液体となるガラス状の溶液に、核燃料のトリウムを溶かし込んだ炉である。溶融塩は化学的にも安定しており、沸騰しにくいとともに、冷えれば固まるので、放射性物質を大量に放出する事故は非常に起きにくい。トリウムは核爆弾にすることが難しいので、テロにも強い。

 高温ガス炉やトリウム溶融塩炉などは、昨今の新技術ではなく、昔からある技術である。近年、軽水炉には大量の安全設備を設けることが必要になってきているが、高温ガス炉は物理現象で安全を確保していることもあって、コストも軽水炉より安い。日本は高温ガス炉開発では世界一であり、今すぐにでも建設可能な技術力を有する。

 発電量が小さいことから運転コストは軽水炉のほうが若干安く、実績も不足しているが、経済的にも技術的にも確立しており、日本が世界に売り込むことのできる「超安全炉」になりうる可能性を秘める。投資さえあれば、経済的にも、安全性にもメリットの大きな原子炉を世界中に造ることができるのである。

 日本はこれまで核燃料サイクルを最優先し、高速増殖炉の開発に注力してきた。高速増殖炉は原子炉が燃料を生む鉱山であり、資源をもたない日本にとっては、電気を作るとともに、鉱山を作るという魅力が大きい。高速増殖炉も自然対流という物理現象によって原子炉を冷やすことができるので、ある意味、軽水炉よりも安全である。

 しかし、経済的な観点や化学的に活性なナトリウムを用いることなど、まだまだ開発段階にある。結果として大量のプルトニウムが蓄積し、それを燃やすこともできずにいる。高速増殖炉で将来の鉱山(燃料)を供給するという日本の戦略があったために、それ以外のより安全な原子炉への投資が進まないという現実もある。大量の燃料を生むことにこだわるよりも、現時点でコスト的にも優位な超安全炉を開発することは、日本の技術力を維持向上する意味でも重要であろう。

 第3世代プラス軽水炉と呼ばれる安全性をより高めたABWRやAPWR等を用いるとともに、軽水炉から生成されるプルトニウムを燃やして安全に廃棄できる高温ガス炉を組み合わせることで、千年とは言わないまでも百年単位での、安全で安定なエネルギー供給が可能になる。超安全な高温ガス炉を、国内だけではなく輸出インフラとして、積極的に利用していくことも重要な日本の戦略であろう。

  
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◆Wedge2014年7月号

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