エネルギー問題を考える

再生可能エネルギー接続保留は誰のせい? 国会の責任を問う

朝野賢司 (あさの・けんじ)  一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

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(画像:iStock)

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 実は、なぜ適用時期が認定時点になったのか、あまり知られていない事実が2つある。第1は、FIT実施前のパブリックコメント募集の段階では価格適用時期は契約時点だったが、事業者からの「ファイナンスを組むためにも極力早い段階での価格の確定を期待する」等の要望を受け、パブコメの回答として、投資環境整備を重視するという理由で設備認定時点に早めていることだ。
(要望は「調達価格及び調達期間等、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の施行関係事項に関するパブリックコメントの実施」(p.42~43)、回答は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度パブリックコメントに関する意見概要及び回答」(p.28、番号25と28))

 第2に、価格適用を認定時点にすることで、いわゆる「空枠取り」問題が起こることは、FIT制度開始前にエネ庁が認識していたことである。第2回調達委(2012年3月15日)の議事録によれば、調達委の山地憲治委員から適用時期が論点となるとの指摘を受けて、「枠取りというか初年度の価格を受けようとするためだけに、蓋然性がきちんと決まっていないのに設備認定等の申請が出てくる」として、たたき台を示して、調達委だけでなく、世の中に示し意見を聞くとしていた。また、パブコメ募集段階では、「事業計画が固まっていないにも関わらず有利な調達価格等をとりあえず確保するため、事業計画策定途上で調達価格等だけ確定させようとする不正事案が生じることも懸念される」ことから、「当該事業に要する費用が相当程度確定した段階でなければ、適用すべき調達価格等を確定させることはできない」として、「電気事業者との特定契約の締結時の年度の調達価格等を適用すること」としていた。

 したがって、エネ庁は、空枠取りの問題を導入前から把握していたにもかかわらず、確信犯的に買取価格の適用時期の設定によって再エネ事業者を優遇したと言えるのだ。

 最大の問題は、適用時期問題が、審議会等のオープンな場で全く議論されなかったことである。パブコメで適用時期の違いを踏まえてエネ庁が自身の考え方を示しているのは良いことだが(結果としてたとえ間違っていたとしても、何を根拠に判断をしたのか辿ることができる)、当初から問題点が認識されていたのであれば、少なくとも調達委で議論することで意思決定の透明性を確保すべきだっただろう。

総額50兆円を超える国民負担を推進した国会

 接続保留に関して、この間の国会での議論を聞いて首をかしげるのは、「政府は再エネ最大限導入と掲げている」とし、いくら高くても何でも買い取るかのような主張が幅を効かせていることだ。しかし、費用負担の上限等、効率性の観点をそぎ落とした法案を成立させた「立法の不備」は、前述した三者の責任の中で最も重いのではないか。再エネ特措法が成立した経緯を振り返ってみよう。

 そもそも、再エネ特措法の原案は2011年3月11日に閣議決定され、同年8月11日に自民党の修正案をほぼ全て取り入れる形で、民自公3党の修正合意によって、現行の再エネ特措法が成立した(図2年表参照)。

図2 「菅退陣」に弄ばれたFITの導入経緯
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 この国会審議による修正によって、FITの内容は、エネ庁の審議会における検討内容(再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチームによる「再生可能エネルギーの全量買取制度の大枠について」、買取制度小委委員会報告書 )、それに基づく3月11日に閣議決定された原案と大きく異なったものとなった。

 とりわけ、費用負担の上限という考え方がなくなり、電源別規模別の買取価格が設定されることになったことが大きい。効率性の観点を弱めたのは、国会である。

 費用負担の上限については、当初、賦課金単価は、「1kWhあたり0.5円を超えない範囲内の負担額(一般家庭150円/月)」と海江田万里経産大臣(当時)が明言していた(衆議院本会議における法案趣旨説明答弁、2011年7月14日)。しかし、衆議院で修正案が可決された(8/23)翌日、「政府提出法案では0.5円/kWhを超えない範囲内の負担額と考えていたが、衆議院での修正の趣旨を踏まえる必要がある」「衆議院における法案修正を踏まえ、150円としていた負担額は上昇する可能性がある」(海江田大臣による8/24参院本会議における法案趣旨説明答弁)としている。つまり、この上限に関して政治的な逃げ道が確保されたのだ。ちなみに、14年度の賦課金単価は「0.75円/kWh」であり(図1)、既に当時議論していた上限を超えている。

 電源別買取価格については、原案では、買取価格は1kWh当たり15~20円、買い取り期間は15~20年間で、太陽光発電とそれ以外の再エネ電源の2種類に分けるだけで、太陽光発電以外には電源別の区別がなかった。しかし、修正案では、太陽光発電以外についても再エネの種類ごとの設置費用に適正利潤を上乗せした価格設定を行うことになった。特に、法律の施行後3年間を利用拡大の期間として、「調達価格を定めるに当たり、特定供給者が受けるべき利潤に特に配慮する(附則7条)」という修正を加えたことによって、高めの買取価格が設定されることとなった。

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著者

朝野賢司(あさの・けんじ)

一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

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