2024年4月16日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2014年10月24日

<67年には「亀の子ドラムカッター」が登場する。親亀と子亀のごとく2台を上下に重ね炭層すべてをドラムカッターで掘削する。採炭作業から発破を不要とすることを目論んだ。「これで果たしてうまく採炭できるのだろうか」。採炭切羽で亀の子を見た松下さんは懸念を持った。それは正しかった。発想は良かったが重量がありすぎた。まもなく親亀は子亀を降ろした。>

<新技術は成功もあれば失敗もある。各炭鉱はそれぞれの状況に適合するよう技術研究に努力を重ねていた。松下さんは当時の炭鉱技術界をそう振り返る。>

 地に足をつけ、人をつなぎ、生の声を聴く。炭鉱マン、鉄道マン、技術者やOB、研究者、各産炭地の仲間たちと連携する著者にしかなしえなかった貴重な「オーラルヒストリー」である。

 本書は同時に、石炭産業の過去と現在を客観的に見すえ、未来への視座を与えてもくれる。日本の資源エネルギー問題や地方創生を考えるうえでも、知っておきたい事実が語られている。

 「釧路では今日も石炭が生み出されている。明日もあさってもだ。記録することはこれからも生まれ続ける」。著者のこれからの記録が幸福なものであれ、と願う。

  
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