経済協力と国境紛争
複雑な中印関係


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米ブルッキングス研究所のリー上席研究員と、同研究員のタイソンが、National Interest誌ウェブサイトに9月28日付で掲載された論説で、中印両国は経済面を中心に協力の余地が大きいが、他方、国境紛争が両国の今後の発展にマイナスの影響を与える可能性がある、と述べています。

 すなわち、習近平は、中国とインドは「アジア経済の2つのエンジン」であり、両国が多極化する世界で指導力を発揮するため、経済的、戦略的関係を強化すべきである、と述べた。習近平は、最近の訪印で、モディ首相との緊密な関係をアピールし、領土紛争の解決を求めると約束し、経済的、外交的協力の強化を訴えた。モディは、経済開発の中国モデルを称賛し、インフラや製造業で中国のような発展を遂げたいと述べた。習近平は、高速鉄道、工業団地の建設での協力を約束した。

 重要な分野の一つは原子力発電の推進で、日米が協力を申し出ているが、原子力事故の際、外国企業に多額の損害賠償を要求するインドの国内法のため、協力は進んでいない。もしこの間、中国がインドとの協力の交渉に成功すれば、今後数十年にわたり、1500億ドルを超える原発開発に参加することになる。

 中印協力の障碍となっているのが国境紛争で、最近数百名の中国兵が実効支配線を越えてインド領に侵入し、キャンプを設営した。この最近の事例は、規模が大きく、習近平の訪印直前に起きたのが特徴で、中国の軍部、政府の中に国境紛争の継続を望んでいる者がいることを示唆している。中国が実効支配線をめぐって挑発を続ければ、中印協力の今後にマイナスの影響を与えるだろう。

 習近平は、途上国の必要と目的により適うよう国際制度と規範を変えるという、中印共通の目的に向け、真剣に努力する姿勢を示さなければならない。中国は経済、軍事面でインドを凌駕したが、この目的のためには平等の参加者としてインドに接しなければならない、と論じています。

(出典 Cheng Li & James Tyson“China and India: Asia's Budding Partnership or Growing Rivalry?”The National Interest;Sep.28, 2014)
http://nationalinterest.org/feature/china-india-asias-budding-partnership-or-growing-rivals-11361

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 インドは、その地理的、戦略的地位、経済大国としての潜在的可能性から、日米中いずれにとっても重要な協力相手ですが、インドにとって、日米と中国は相容れないパートナーというわけではありません。その中にあって、印中両国が利害を共有するのは、まず経済であり、経済協力の推進によって利益をより多く受けるのは、経済の発展で後れを取るインドの方でしょう。

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