2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2014年11月5日

 大学の国際化を支援する予算額の推移をみると、08年度までは20億円程度だったのが、11年度には52億円に増加、12年度は103億円と倍増になり、14年度は127億円にまで膨らんでいる。文科省の掲げる人材養成戦略が安倍政権の『成長戦略』に組み込まれ、一気に予算が伸びた形だ。

 主要な大学はこの「SGU」プログラムの30大学の中に選ばれようと、これから申請を出す。東大、早稲田、慶應などの有力総合大学はいずれも『トップ型』を目指す方針で、地方の大学や工学系や医学系など特色を生かせる大学は『牽引型』に申請する。どれだけ特色のあるグローバル戦略を掲げているかが選考のポイントで、選定されると毎年数千万円から億円単位の補助金が支給されるだけに、各大学は何とか30校に入ろうと必死だ。学生からの入学金と授業料が主な収入の私立大学は、補助金はのどから手が出るほど欲しい資金で、認められれば大学のブランド力のアップにもつながる。

 勢い、大学側は補助金欲しさに、留学生数や外国人留学生の受け入れ数、外国人教師の人数などで欲張った目標を設定しがちになる。民間出身の福田秀樹神戸大学長は「ジャンプ(背伸び)した目標を設定すると、それを達成しようと大学内の要員を増やすなど無理をしがちとなるので、責任のある目標をきちっと提示すべきである」と指摘する。

 この数カ月間、全国の主要大学十数校、文科省などを駆け足で取材した。どの大学も「グローバル人材」を育成しようと対策を練っている。目立つのは入学した学生の中から選抜し、特別のコースを短期間に履修させようとするプログラムだ。

 大学は口を開けば「多様な人材を育成したい」と繰り返すが、大学が用意しているのは型にはまったカリキュラムで、これでは多様な人材が育つ保証はどこにもない。

 結局のところ、補助金狙いのグローバル戦略が各大学にはびこっているのが現状で、文科省は各大学が提出してきた戦略の内容が整合性の取れたものかどうか細かく点検すべきで、留学実態のチェックも日本学生支援機構(JASSO)に丸投げするのでなく、自分の目で確かめる必要がある。

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◆Wedge2014年6月号

 


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