2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2014年11月7日

上・アフタースクールが行われている新渡戸文化学園(東京都中野区)。
下・NPOチャイルド・ケモ・ハウス(撮影・編集部)

 また、医療分野でも新しいニーズに応えるサービス・イノベーションを非営利組織が起こすケースもある。大阪大学病院で小児がんの治療にあたっていた楠木重範さんが設立したNPO「チャイルド・ケモ・ハウス」(神戸市中央区)は、およそ1万人に1人が発症し、子どもの死因第2位に挙がる小児がんの課題に取り組む。通常は感染リスク等から隔離されてしまう子どもと家族が、ともに過ごし治療を受けられる、診療所と住居が一体となった施設を開設した。

 患者目線に徹底的にこだわり、イベント参加やグッズ購入など楽しんで寄付ができる仕組みづくりや、企業のマーケティング活動との提携で、事業の持続可能性を担保した。

 育児分野でも、新しい社会課題を事業的手法で解決を図る取り組みがある。平岩国泰さんが、長女誕生を機に小学生の子育て環境に疑問を持ち、米国のアフタースクールを参考に設立した「放課後NPOアフタースクール」(東京都港区)だ。

 共働きの夫婦が保育所の延長保育に頼って仕事を続けても、子どもが小学生になると、安心して放課後を過ごせる場所がなくなる「小1の壁」の問題に対して、放課後の校舎を活用した教育プログラムを展開。子どもを預かって宿題を見るだけの学童保育でなく、企業や市民を先生に迎え、数百の体験型プログラムを開講、人生に大切な力を身につけられる高付加価値な学習機会を提供する。

 平岩さんは会社員時代に鍛えた経営感覚で、利用料、寄付、VPファンド「日本VP基金」からの資金など複数の収入源を組み合わせ、巧みに事業を運営する。今後は公立小と連携し、極力低価格で質の高い学童保育を広めたいと話す。

 これらの事例から理解できるように、これまで行政等公的セクターの役割とされてきた社会ニーズへの対応は、事業的手法で解決を図れる領域が多くある。人口減少、高齢化等に伴う財政圧力により、公的セクターの役割の見直しを迫られる今日、ソーシャル・ビジネスに代表される社会的事業の価値を最大化し、現場のイノベーションを誘発することで社会課題を解決しようとする社会的投資がその役割を拡大している。

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◆Wedge2014年6月号

 


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