2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月10日

 中国は、物理的にも心理的にも、ニューデリーに圧力を掛けている、と論じています。

(出典:Dean Cheng ‘China’s Growing Military Pressure Against India’(Daily Signal Sep.29,2014))
http://dailysignal.com/2014/09/29/chinas-growing-military-pressure-india/

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 上記は、中国がインドに与えている軍事的圧力について、海と陸での行動をあわせて考えると、「包囲」とまではいかないにせよ、強化されていることは間違いない、と指摘している論説です。

 「真珠の首飾り」という言葉は、ペンタゴン(米国防総省)が命名したものですが、今までのところ、言葉の上での派手さや地図上での印象とは裏腹に、インドを封じ込めるほどの軍事的な実体は認められません。

 パキスタンは中国の同盟国と言ってもよいので、パキスタンのグワダル港は中国の軍事基地になり得ますが、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカの港がそうなる可能性は、これら諸国とインドとの関係などを考えると、低いと思われます。

 さしあたって、中国は、商業目的、また、シーレーンを確保する政策として「真珠の首飾り」を考えているのであって、インド封じ込めを狙っているというのは、過大評価でしょう。インドもアンダマン諸島の軍事化、海軍増強で、あり得る封じ込めには対抗しようとしています。

 ただ、中国がインドを海洋から封じ込める意図があるかどうかの判断基準の一つとして、潜水艦をどのように展開させるかというのは、確かに有益な視点であると思います。

 理解に苦しむのは、なぜ中国はインド北部の陸上国境で緊張を高める措置をとっているのかです。昨年6月、インドのシン前政権は、温家宝訪印を実現するために、侵入した中国軍の撤兵と引き換えにインド側の要塞等を破却するという譲歩を見せましたが、今年9月のモディ新政権の対応は、習近平訪印のために譲歩するということはせず、9月末の国連総会に際しての中印外相会談での合意を待って、勝敗の無い形で双方が撤退しています。

 中国の意図としては、権利を行動で主張しておくということなのでしょうが、結果としては、モディ政権の対中不信を強め、先般のモディ訪米の際に米印間の安全保障関係の強化を推進することに繋がっています。

*関連記事:海洋安全保障におけるインドの指導力に期待

  
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