2024年4月19日(金)

【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年11月13日

 この気質が、私にも流れるようになりました。それが、巨大組織に立ち向かうという行動につながったのです。世界を見ることで、日本とのギャップを感じるのは大事なことです。そのギャップこそがビジネスチャンスにもなります。

 DDIでは、事業が上手く行って組織が巨大化するほど、かつて自分が壊そうとしたものが内部にできてきました。私はDDIを去り、慶應義塾大学の教授として起業家の育成にあたりました。このとき、シリコンバレーのベンチャー企業5社の社外取締役も務めました。

 この間に私のなかで日米のインターネット環境のギャップが、大きくなっていったのです。日本では必要なときにだけ接続して、ちまちまインターネットをしているが、アメリカでは常時接続でなおかつ通信速度が速い。このギャップを埋めて日本に「ブロードバンド革命」を起こしたい。新しい夢が描けたのです。こうして1999年にイー・アクセスを興しました。

 2012年、イー・アクセスは長年ライバルとしてしのぎを削ってきた孫正義さんのソフトバンクグループに入ることになりました。孫さんとの提携を選んだのは、安住するのではなく、常に新しい夢を持って挑戦するという同じマインドを持っているからです。

 孫さんは昨年、アメリカの携帯電話事業会社スプリントを1.5兆円で買収しました。外国企業を買収して自ら乗り出して経営にまで行うのは孫さんがはじめてではないでしょうか。日本の経営者像を変えるという意味で非常に期待しています。

 最後に未来の起業家たちに伝えたいのは「飛べば分かる」ということです。私も最初の起業のときは4人目の子どもが生まれたばかりで、その恐怖といえば千尋の谷を覗くようなものでした。とにかく怖い。でも、飛んでみると自分でも気付かなかったような力が、自分にあることが分かります。ただ「エイや」では駄目です。他人の3倍準備して下さい。これも私と孫さんの共通点ですが、とっても怖がりなのです。だからこそ慎重に入念に準備をするのです。

 これからの私は、「第二電電」の名付け親で、ソニー創業者の盛田昭夫さんのように「グレイヘア(経験豊富なアドバイザー)」として、新たな挑戦を続けていくつもりです(談)。

  
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◆Wedge2014年5月号


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