2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月12日

 このような状態では、プーチンはウクライナの主権を維持するのに必要な措置を講じようとはしないだろう。そのような措置の主なものは、すべてのロシア軍と装備をウクライナから撤退させること、ロシアとウクライナの国境を、国際監視のもとに封鎖すること、である。メルケル首相とオバマ大統領はこの条件を主張し、それを公にするべきである。さもなければ、プーチンはすでに成果のある侵略を再開しようとするだろう、と述べています。

(出典:‘Russia’s ‘deescalation’ in Ukraine doesn’t warrant the lifting of sanctions’(Washington Post, October 6, 2014))
http://www.washingtonpost.com/opinions/russias-deescalation-in-ukraine-doesnt-warrant-the-lifting-of-sanctions/2014/10/06/bd97604c-4d75-11e4-aa5e-7153e466a02d_story.html

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 社説の意見はその通りだと思います。

 プーチン露大統領の戦略は、ウクライナ東部を事実上支配下に置き、ウクライナ全体については、ウクライナがEUに加盟しないまでも、政治的、経済的に西欧に結び付くことを阻止し、そのためウクライナに揺さぶりをかけ、不安定な状態にしておくことと考えられます。プーチン大統領がそのような戦略を取り続ける限り、欧米が経済制裁を強化することはあっても、緩和することは賢明ではありません。制裁の緩和ないし撤廃の条件として、ロシア軍と装備の撤退とロシアとウクライナの国境の封鎖を求めるのは理に適っています。

 プーチンは容易に戦略を変えないでしょうから、欧米の対露経済制裁は長く続くことが予想されます。当初、ロシアとの経済関係が緊密なので、欧州諸国、特にドイツは制裁に乗り気でないだろうと言われましたが、ドイツは決断をしたようです。ロシアも対欧米経済依存度が大きいので、制裁はロシア経済にとっても打撃ですが、経済的にマイナスであっても、この際は政治、戦略的考慮を優先させるものと考えられます。

 ただ、経済停滞の続く欧州の出方は複雑です。フランスは、ヘリ空母ミストラルのロシアへの引き渡しを、米国などからの圧力もあり、一度は延期しましたが、その後、遅れての引き渡しを決定しました。フランス経済の停滞により、工場等での雇用維持を求める国内世論が背景にあったと考えられます。

 一方、11月2日に行われたウクライナ東部の親露派武装勢力による議会等の選挙に関して、ウクライナのポロシェンコ政権や欧米諸国は違法として認めていませんが、ロシアは選挙結果を認めるとしています。実際、ロシアは、選挙当日の11月2日、「人道支援」と称して、車両約100台で物資をドネツクとルガンスクに搬送しています。ロシアと西側の溝はますます深まり、当分、対ロ制裁の解除は望めないでしょう。

  
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