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2014年11月19日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

『新京報』紙(2014年8月26日)紙面
http://epaper.bjnews.com.cn/html/2014-08/26/node_22.htm

・「公開の工作」と「秘密工作」を結び付ける事
・「伝統的安全保障観」から「総体的安全保障観」への脱皮
・専門機関と群集路線の結合
・「積極防御」の方針で「法に依拠して処罰」する事
・カウンターインテリジェンス工作において共産党の指導を堅持する事
・国家安全機関(主として国家安全部を指すと思われる)と警察、軍の協力

 今回の施行を前に法案草案の審議の過程において国家安全部の耿惠昌部長は、法規を修正する意義について説明を行い、各部門間の協力が求められていると述べた。

 条項に記された「財産差し押さえ」とは仰々しく、市民の反発を呼ばないか気になるが、国による「差し押さえ」や「封鎖」、「凍結」は、「国防動員法」(2010年)によって規定された国家の安全保障上で必要な資源の徴用の条項にも通じるものがある。ただ徴用の際に賠償が補償されると記されたことは、市民の財産保護を条文化したと言えなくもなかろう。

汚職取り締まりとも無関係ではない?

 また、同法制定に際して求められたのは、多くの部門が乱立する状況で如何に統制を取るかという点であろう。まして政法系統を牛耳っていた周永康なきあと如何に組織に上からの命令を実施させるのかという点が前提である組織改編が喫緊の課題になっていたことは想像に難くない。その意味では習近平の意図を反映させることができる上からの統制強化という側面が重要だ。

 ここでいう各部門とは秘密警察たる国家安全部と警察に相当する公安部(特に外事警察に相当する国保警察)、そして軍や国内治安対応の武装警察である。広く考えれば、国家海警局や民兵を統括する地方の軍部門である人民武装部や武装部も含まれよう。また機密漏えい防止を担当する国家保密局(2013年12月27日記事参照)や国家密碼局(パスワード局)も防諜任務を担う。多くの部門と膨大な人員が防諜任務に携わっている。

 これらの部門の上に君臨してきたのが政法委員会であり、長年ここを牛耳ってきたのが、このほど汚職容疑で身柄を更迭された前党中央政治局常務委員で政法委員会書記だった周永康である。こうしたことを踏まえれば、指導部に激震を引き起こした周永康や徐才厚、薄熙来の逮捕、汚職取り締まりと今回の「反スパイ法」制定は決して無関係ではなさそうだ。とはいえ汚職取り締まりとスパイ取り締まりの間に直接的因果関係を見出すことは難しい。ただ汚職事件をきっかけに機構改革を進め、上層部による統制が取れた組織に改編し直すよう志向されていることは間違いない。

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