エネルギー問題を考える

2014年11月20日

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石川和男 (いしかわ・かずお)

NPO法人社会保障経済研究所理事長

1989年東京大学工学部卒業後、通商産業省入省、電力・ガス改革に携わる。退官後、内閣官房企画官、規制改革会議WG委員などを歴任。

「電力をやるなら都市ガスもやる」という単純な理由で、都市ガス全面自由化を推し進める経済産業省。料金規制と供給義務の撤廃は大歓迎し、自由化の延長線上に持ち出された導管事業の法的分離には反対しようとするガス業界は甘い。

 東日本大震災後による東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機として、「電力システム改革」と称される諸制度変更が進められている。

 本来ならば、原発事故で失った原子力事業への信頼回復に向けて政官民が一体となって全精力を注ぐべきところだ。しかし、政府・経済産業省は何とも不可解なことに、震災によって深い傷を負った我が国の緊急時とも言えるこの時期に、平時でさえ電力需給コストを引き上げ、電力消費者利益を毀損し、電力産業を弱体化させかねない電力システム改悪路線を猛然と突き進んでいる。

(c) iStock

 今年6月、既に電力小売事業の全面自由化に関する法律が成立し、2016年を目途とした施行に向けて制度設計が進められている。そして、来春の国会に電気料金規制の撤廃や電力会社の発電・小売部門と送電部門の法的分離(発送電分離)に関する法案の提出が予定されている。経産省は、「電力をやるなら都市ガスもやる」という単純な理由で、都市ガス全面自由化に係る法案も、電力関連法案と一括して次期国会に提出しようとしている。

料金規制と供給義務の撤廃を悲願とする都市ガス業界

 都市ガス全面自由化の具体策を検討しているのが、昨秋から始まったガスシステム改革小委員会。驚くべきことにこのガス小委では、都市ガス全面自由化の利害関係者である消費者や新規参入者そっちのけで、“まな板の上の鯉”である都市ガス事業者を規模別・形態別に類型化し、各々の数社から小売自由化に対する意見を聴取しただけで、今年3月には主要論点を決めてしまった。その論点が提示されるまで、家庭消費者代表委員は参加しているものの、消費者側や新規参入者たちの意見を聞く場は一度も聞かれていない。

 ガス小委では、大手から中小まで全ての都市ガス事業者が、声を揃えて“自由化賛成!”を表明した。理由は、全面自由化の交換条件として、料金値上げの足枷である「料金規制」と、儲からない消費者にも適用される「供給義務」の2つの消費者保護規制の撤廃を期待したからだ。料金表の公表ですら「事業者と消費者が個別に料金を合意すれば良く、納得しなければ他へどうぞ、というのが自由化の醍醐味」とガス小委で公言するガス事業者も出てくる始末。確かに自由化とは、供給者が消費者を選ぶことと表裏一体だ。

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