エネルギー問題を考える

2014年11月20日

»著者プロフィール
著者
閉じる

石川和男 (いしかわ・かずお)

NPO法人社会保障経済研究所理事長

1989年東京大学工学部卒業後、通商産業省入省、電力・ガス改革に携わる。退官後、内閣官房企画官、規制改革会議WG委員などを歴任。

 全面自由化となれば、対象となる需要家の95%は全国2750万件の一般家庭。電気を供給する送電線やガスを供給するガス導管には、ネットワークが持つ自然独占性がある。だからこそ電力や都市ガスには、地域独占の下で料金規制や供給義務といった消費者保護規制が課せられてきた。電力では、全面自由化後でも競争が進展せず送電線を持つ既存電力会社による「規制なき独占」が危惧されることから、これら消費者保護規制を経過措置として残すことにしている。

 しかし、都市ガスでは、既に自由化している大口分野では電力に比べて都市ガスどうしの競争があり、また、その競争の可能性が低い地域でもオール電化やLPガスとの競争が活発で代替性があるといった理由で、都市ガス業界の意向を丸呑みした「料金規制・供給義務の撤廃」が示された。それ以降は電力全面自由化論に追いつけ! とばかりに、怒涛の如く都市ガス業界寄りで消費者不在の議論が進められた。

 その真骨頂は、6月に議論された簡易ガス事業(需要家数70戸以上へのLPガス導管供給。団地ガスとも呼ばれる)に係る消費者保護規制の撤廃。その根拠の大半は、「事業者ヒヤリング」と「サンプル調査による資源エネルギー庁調べ」。ヒヤリング先サンプルの抽出方法や全体比率や個別件名も不透明なまま、あたかもそれが全体像であるかのように提示したのだ。

 ガス小委とは別のガス安全小委員会(都市ガスの安全に関する検討の場)では、6月、「消費者は都市ガスの小売自由化の必要性を感じていない」、「電力と違い、ガスの自由化を消費者は誰も知らない」、「自由化して料金が下がるなど消費者メリットはあるのか」と、経産省の強引な全面自由化ありきの議論に対して、消費者団体を始めとする複数の委員から不信の声が爆発した。防戦する経産省側は、「自由化ありきではない」と回答。8月に消費者団体が実施した内部アンケートでも、電力全面自由化を知らない割合は4%だが、都市ガス全面自由化については71%が知らないとの結果だった。

全面自由化で本当に競争が起きるのか

 都市ガスを全面自由化しても、特に地方では、教科書通りには都市ガスどうしの競争は起こり得ない。「送電線と違って全国にガス輸送導管網がない」、「ガス輸送導管と連結した地方都市ガス事業者の消費者に、輸送料を払いガスを供給するにも、更に地方都市ガス事業者の導管利用料が累積加算されコストがかかる」、「多種多様な発電とは違い、天然ガスの輸入者はLNG基地を持つ電力会社などに限定される」といった理由からだ。

 既に自由化している大口ガス供給でも、新規参入が活発なのは3大都市圏だけで、都市ガス以外の新規参入の大半は電力会社や石油、国産天然ガス会社。それも、全国ベースで参入件数率はわずか2%しかない。

 ところが経産省は、都市ガスどうしの競争がなくても、LPガスなど他燃料との競合と代替性があることを、都市ガス事業の消費者保護規制を撤廃する理由として挙げる。その指標として、次の2つの強引なデータ解釈を示している。

関連記事

新着記事

»もっと見る