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2014年11月27日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

しかし、中国企業が落札したのはどういうことか。結局、中国企業の背後には政府による支援があり、さもなければ中国企業にとって落札は不可能だっただろう。44億ドルという費用は国際基準よりずっと低く、中国国内の工事費よりも低い。中国北方交通大学の紀嘉倫教授によると、もし国内の建設コストで計算すれば、キロ当たり1億5000万元で、210キロならば少なくとも315億元(約50億ドル)かかる計算になる。これを海外でのコストで見ると建設総額は69億3000万ドルと見込まれるという。

このように国の資本に依拠して海外に売り込もうという方法にはマイナス要素が容易に見て取れ、未知なるリスクも含まれるだろう。ミャンマーでの港湾建設でも同様のことが起きた。ミャンマー側が提示した要求は厳しく最終的に中国企業しか残らなかった。WTO規定違反のリスクもある。コストより低い価格はダンピングの疑いもあり、国際イメージを損ないかねない。中国企業が入札参加する国の多くは法制度が整っておらず、治安の悪さもネックだ。政変や社会の危機が起きて中止に遭うリスクも小さくない。

 中国による高速鉄道の海外進出は一見怒涛の勢いだが、その実、こうした記事を読み、中国が推し進めるプロジェクトをよく見てみるとコストや安全性を度外視した鼻息の荒さばかりが目につく。こうしたスピード重視の姿勢は中国で高速鉄道を開通させた当初の熱気を思い出さずにはいられない。その後起きた悲劇は取り返しがつかないものだったにもかかわらず、いまだ強気の姿勢を持ち続けている。しかし、海外に売り込む以上、やはりスピードより人命が一番大事だ。「安全第一」という言葉を心に刻んでほしいものである。

  
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