ベストセラーで読むアメリカ

2009年7月15日

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■今回の一冊■
GONE TOMORROW

筆者Lee Child, 出版社Delacorte Press, $27.00

GONE TOMORROW
NYタイムズ・ベストセラーリスト
単行本フィクション部門1位(5/29付)

 出版してすぐにニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリスト(ウエブ版5月29日付)の単行本フィクション部門でトップに躍り出たアクション・サスペンス小説だ。退役軍人である主人公のJack Reacher(ジャック・リーチャー)が、アメリカ全土を放浪する中で、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも、最後には悪者たちを叩きのめすシリーズ第13作目だ。

 家族もいない主人公のリーチャーは、歯ブラシと銀行のATMカード、期限切れのパスポートにわずかの現金だけを持って、アメリカ中をあてもなく旅している。自家用車もないから足は主にバスやヒッチハイクだ。13年働いた陸軍ではmilitary police(憲兵)として活躍。軍隊の中で強面のならず者たちを取り締まってきただけあり、喧嘩も強く、記憶力と推理力が抜群のスーパーヒーローだ。たった1人の旅先で出会う悪者たちをなぎ倒す。

元軍人の一匹狼、ジャック・リーチャー

 ふらりと訪れた田舎町で、悪事を働く地元ギャングたちに、頼まれもしないのに正義の鉄槌を下す。力ずくで正義を貫き通すヒーロー像に、アメリカの読者は爽快感を覚えるのかもしれない。しかし、作者のLee Child(リー・チャイルド)はニューヨーク市在住だが実はイギリス人。圧倒的な軍事力を背景に、独善的な外交戦略を展開するアメリカへの皮肉が作品に込められているとみるのは、深読みしすぎだろうか。

 それはともかく、元軍人という特異なキャラクター設定を生かしたストーリー展開は巧みで一級のエンターテインメント小説に仕上がっている。ジーンズにTシャツという出で立ちで旅を続ける主人公は非常にストイックで無口。そのキャラクターにあわせるかのように、短いセンテンスを重ねるテンポいい文体に冒頭から物語世界に引き込まれる。ぶっきらぼうにも思える簡潔な表現は特に、英語を母国語としない日本人にも読みやすいというメリットもある。

テロリストを見分ける方法

 例えば、本書の冒頭は次の通りだ。

 Suicide bombers are easy to spot. They give out all kinds of telltale signs. Mostly because they’re nervous. By definition they’re all first-timers. (p1)

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