韓国の「読み方」

2014年12月3日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

「韓国を世界に知ってもらいたい」

 現地の人々にとってみれば、ふってわいたような話だ。現地側の要望はそのうち、韓国企業に就職できるように韓国語教育をしてほしいとか、韓国企業に就職するための職業訓練学校を作ってほしい、韓国企業に進出してほしいというものに変わっていった。そもそも多民族国家であるインドネシアで、ハングルという異質な文字を少数民族向けに持ち込もうとすることは、政治的に敏感な問題でもある。韓国政府もさすがに、内政干渉と批判されることを警戒して「ハングル普及事業」を表立って支援することはできなかった。李さんの思いは、それほど簡単に実現するものではなかったのである。

 前述した通り、チアチア族へのハングル普及は結局、うまく進んではいない。韓国では既に、忘れられてしまった感もある。ただ、ハングル博物館のプレスリリースにあるように「ハングルの文字・文化的価値を広く知らしめ」ることは、今でも強い関心を持たれている。

 ハングルに対する思い入れは、韓国社会に根強い「韓国を世界に知ってもらいたい」という思いにつながっている。それは、外国での韓流ブームに熱狂することにも通じるものであり、国際社会に一目置かれることを自明の理と考える日本と中国にはさまれた地理的条件とも関係する意識だ。私は、保守系の閣僚経験者から「小さな国の人々が持つコンプレックスというものがあるんだ」と言われたこともある。韓国は、人口5000万人で、経済規模を示す国内総生産(GDP)も世界14位。決して小国とは言えないのだが、日中にはさまれていると相対的に小国意識を持ってしまうということだ。そうした意識については、別の機会に論じてみたい。

  
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