2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2014年12月8日

――一方で、打ち合わせがうまくいった結果、一気にそれまでの不安が解消されるみたいなことはありますか?

 不安というのは特に感じていませんね。前提が違うかもしれない。仕事というのは、自分達で構築していくものですから、最初からプロジェクトの全貌がはっきり掴めているということなんてないんです。だからそれを不安に思ったりはしないですね。

 「できないかも」とか、上手くいかないんじゃないかというような不安もないですね。

――打ち合わせという場所は案を出す場でもありますが、何か重要な決断を下す場でもありますね。決断の際に迷われることはありますか?

 もちろんありますよ。でも、最後につじつまが合えばよいと思っています。例えば、前回の打ち合わせでこうだと決めたことが次の打ち合わせで「やっぱりこっちにしよう」となることも多々あります。

 というわけで決断するシーンはよくありますが、それはゴールというわけではないんです。ゴールではなく中間地点というか。打ち合わせとはいくつかの“チャプター”のようなもので、それが積み重なってひとつのプロジェクトとなっていくもの。たとえば映画やドラマのストーリーでも、この人が味方だと思っていたら実は敵だったりするじゃないですか。あっちに行ってこっち行って、それによってストーリー全体に深みが出たりする。打ち合わせも同じで、途中途中で見る幅が広がることによって、あらゆる視点からの検証を経た精度の高い議論となっていくのです。

 そう考えると前言撤回することを恐れてはいけないというのがよくわかりますよね。

――なるほど。そう考えると怖くはないですね。

 打ち合わせでしゃべれない人というのは、自分が否定されたらどうしようと思っているのだと思います。その気持ちはもちろんわかります。自分のアイデンティティを傷付けられたら誰だって嫌ですよね。

 こう考えてはどうでしょう。打ち合わせの場は毎回が試合だけれども、それが最後の試合ではないんだと。試合にも練習試合から公式戦まで様々なものがあって、それを全部勝つというのは、どんな選手でもかなり難しいことですよね。

 プロ野球の選手だって、打率が3割超えれば素晴しいしチームも全試合は勝つなんてあり得ないでしょう。だから、打ち合わせにおける発言も毎回絶対負けられないというような気持ちでいたら無理ですよ。もっとリラックスして柔軟な姿勢でいることが重要です。


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