消費の主役は70歳以上の女性に

『L70を狙え!』


中村宏之 (なかむら・ひろゆき)  読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

オトナの教養 週末の一冊

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経済記者の一人として自らの不明に恥じる思いだ。70歳代の女性=L70が近年、実に旺盛な消費を展開しているという実態を本書から教わった。

『L70を狙え!―70歳以上の女性が消費の主役になる』 (吉本佳生、日本経済新聞出版社)

 冷静に考えてみれば、自分も世の中でそうした動きを目にしていなかった訳ではない。だが大きなトレンドとしては捉えきれていなかった。

 ランチタイムともなると、おしゃれな店には女性客が集まり、70代前後の女性とおぼしき人たちで席がすぐにいっぱいになる。東京・東銀座の歌舞伎座に公演を見に来る人たちの多くは女性で、年齢層は70代前後の方々である。デパートの地下食品売り場も、国内外の観光地も、クラシックのコンサートもこうした世代の女性でにぎわい、その活発な消費行動には目を見張るものがある。自分の中におぼろげながらあったイメージが本書を読んで鮮明になった。

 70代の女性というのは、筆者(中村)が成人する以前に抱いていたイメージとは大きく異なる。自分の中で昔は、この年齢層には「おばあちゃん」というイメージが先行したが、今は全くそんなイメージではない。とても元気で若々しい。考えてみれば、戦後の高度成長時代に青春を送り、職場や家庭で一生懸命働き、子育てをした世代である。それを考えると、まだまだ身体や気持ちは元気だろうし、子育てや仕事から解放され、多少なりとも自由になるお金を持っている場合には、今こそ消費しようという気持ちになるのかもしれない。

食生活にもお金をかけられる層

 本書の指摘は一つ一つが興味深い。そもそも男女をあわせた70歳以上の人口は、人口減少社会の中にあっても2050年までは増え続ける。その中で女性の占める割合は大きくなってゆく。70代の8割は日常生活を送るのに支障のない健康状態であり、経済的には住宅費や教育費の負担から解放される。故に、食生活では一番高い肉を買っているのがこの層であるという。和食ばかりではなく、洋食も中華も食べる。コロッケ、カツレツ、ハンバーグなどの1人当たり支出金額も1位だという。著者は、パンなどで70代以上の年齢層を意識した商品開発を行えばもっと売れる、と指摘しているがその通りだと思う。

 著者はこれまで70歳以上の消費というのは注目度が低く、公的な統計でも「ぞんざいに扱っている」と指摘している。確かに従来の発想ではそうした面は否定できない。しかし寿命が伸び、今後、元気で学歴の高い女性が増えてくれば、これまでの70代女性とはライフスタイルが大きく変わってくる。それにあわせて、消費の「質」が変わっていくのも当然だろう。昨年ポール・マッカートニーのコンサートに行った時、若者に混じって70代前後の女性が多く会場にいるのを見てびっくりしたことを思い出した。

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「オトナの教養 週末の一冊」

著者

中村宏之(なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

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