「福祉は施しではない」
千葉市が目指す子育て支援と高齢者政策

千葉市・熊谷俊人市長に聞く市政改革の足跡(3)


柳瀬 徹 (やなせ・とおる)  フリーランス編集者、ライター

1972年伊豆大島生まれ。企画・編集をした本に五十嵐泰正・他『みんなで決めた「安心」のかたち―ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』、片岡剛士『アベノミクスのゆくえ』、久松達央『小さくて強い農業をつくる』、荻上チキ『災害支援手帖』、飯田泰之編『地域再生の失敗学』など。

「呟く市長」は何を変えようとしているのか

隣の家に蜂の巣があるので駆除したい。市は補助してくれるのか――市民から寄せられたそのようなツイートに「住民個々の課題について一つひとつ税金で補助をすることは困難であることをご理解下さい」と答えた市長がいる。首都圏に5市ある政令指定都市のひとつ、約96万人の人口を抱える千葉市の熊谷俊人市長(36)だ。
東京都心にも、成田空港、羽田空港という二つの国際空港にもアクセスしやすいという好条件に恵まれた千葉市だが、熊谷氏が当選した2009年時点での財政指標は政令市ワースト1位。そのままのペースで市債残高を積み上げていけば3年後には早期健全化団体に転落する状況だった。「蜂の巣論争」に代表される、熊谷市長がツイッターなどを活用し市民と行った議論の数々は、「誰が自治体を経営するのか」という地方自治の根本をめぐる対話でもあった。
2013年の市長選で再選された熊谷市長は、もはや「右肩上がり」も「自然増」も望めない時代の首長として、千葉市に何をもたらそうとしているのだろうか。

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「福祉という言葉は嫌いだ」。母親のみならず父親にとってももっとも子育てをしやすい街を目指す市長が、このように語る真意とは。少子高齢化が加速する時代の「自治」のあり方を問う。

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待機児童ゼロを目標にはしない

――インバウンドは地域外から人を呼ぶ「現在」の戦略ですが、「未来」の人口増のための子育て支援についてもお聞きします。千葉市は今年、横浜市から1年遅れで「待機児童ゼロ」を達成しました。ただ、横浜市の場合は「ゼロ」の定義が国とは異なることや、2年連続で定義を変更したことに批判もありました。少し失礼な質問ですが、横浜市が「ゼロ」を宣言した2013年4月時点で千葉市の待機児童はわずか32人だったわけで、強引にゼロ宣言してしまえば良かったという後悔はありませんか?

熊谷:ちらっと思いました(笑)。1年の遅れはイメージ戦略としては大きな差ですので、私もやはり千葉市役所の「実直に、愚直に」というマインドに染まっているのかも知れません(笑)。

熊谷俊人千葉市長

 それは半分以上は冗談ですが、千葉市の子育て支援は短期的な目標を目指していないんです。十分な広さと緑のあるなかで子どもを育てる環境が、千葉市にはあります。その上で待機児童だけではなく、病児・病後児保育など、子育てしている人なら「わかる、わかる」という施策をしっかりとしていって、そこでもブランド化をしていきたいんです。

 支援の質にもこだわります。保育士の数や施設面積についても妥協せずに求めていった上での待機児童ゼロ達成ですから、いずれ千葉市の取組みはもっと評価されるはずです。その時はしっかりと周知していきます。

 保育所の量を追いかけることも大事ですが、質は一度崩れてしまうと建て直すのが困難です。そこは妥協したくないんです。どこの自治体も謳うのはママ支援ばかりですが、それだけではなく、時代の変化を見据えて父親の子育て支援にも力を入れて、行政としての役割を果たしていきたいと考えています。

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「「呟く市長」は何を変えようとしているのか」

著者

柳瀬 徹(やなせ・とおる)

フリーランス編集者、ライター

1972年伊豆大島生まれ。企画・編集をした本に五十嵐泰正・他『みんなで決めた「安心」のかたち―ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』、片岡剛士『アベノミクスのゆくえ』、久松達央『小さくて強い農業をつくる』、荻上チキ『災害支援手帖』、飯田泰之編『地域再生の失敗学』など。

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