2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月16日

出典:Jeffrey W. Hornung,‘Japan Matters for South Korea’s Security’(CSIS, November 10, 2014)
http://csis.org/publication/japan-chair-platform-japan-matters-south-koreas-security-0

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 筆者のホーナンは、米太平洋軍の研究機関APCSS所属の日本専門家です。この論説は、韓国の安全保障にとっての日本の重要性を指摘すると共に、韓国の対日認識の異常性を鋭く指摘し、日本との安全保障面での関係強化を促しています。日米韓3カ国間の安全保障面での協力の必要性が高まって来ている中で、韓国が異様な対日姿勢を続けることへの米国の安全保障問題専門家の懸念が正直に表現されている、警世の論文と言ってよいでしょう。この論調は、韓国内でも注目されているようです。

 米軍が日米の事前協議なしで在日米軍基地から出撃することはない、というのは、日米安保条約の交換公文で定められている一般的事項であり、韓国を狙い撃ちにしたものでも何でもありません。その趣旨は、日本が米国に白紙委任はせず、自国の安全保障の観点から決定を下すということです。安倍総理は、そのことを指摘したに過ぎません。

 韓国側が過剰反応したのは、安倍発言を、日本の集団的自衛権行使容認に反対したことへの意趣返しと邪推したためでしょう。韓国政府は、特に、日本が韓国領内で集団的自衛権を行使することに強く反対しています。国際司法裁の判決によれば、集団的自衛権行使の要件の一つに、被攻撃国による明示的あるいは黙示的な援護要請があります。逆に言えば、援護されたくないのも自由であり、そういう意思は尊重されることになります。ただ、韓国側は、集団的自衛権について、韓国の領域外であっても、韓国近海で自衛隊が米軍を援護することにも反対しているようです。これは筋が通らない話ですから、日本としては、明確に異議を唱えるべきです。

 最近、APEC首脳会議、ASEAN関連首脳会議、G20首脳会議などの重要会議が続き、その中で、韓国としても関係諸国との関係の可能性と限界に関する認識を深める機会となり得たはずです。

 韓国社会に日本との関係改善の重要性についての意識が生まれることが北東アジアの安定のために有益であることは言うまでもありません。韓国国民の意識を考えると、日韓関係の改善が急速に進展するとは思えませんが、少なくとも、特に軍当局間の関係は良好であり、日米韓の安全保障面での実務者間での協力を強化することは可能かつ不可欠でしょう。

[特集]日韓関係の行方

  
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