WEDGE REPORT

2015年1月7日

»著者プロフィール
著者
閉じる

梅原直樹 (うめはら・なおき)

国際通貨研究所 開発経済調査部 上席研究員

1989年東京大学教養学部卒、東京銀行入行、日比谷支店、台北(語学研修)、広州駐在員事務所、大阪支店、外務省欧亜局、経済協力部、国際業務部、東アジア企画部等を経て2014年10月より現職。

 アジアにおいては8兆ドルもの膨大なインフラ需要が存在する(アジア開発銀行研究所(ADBI)の試算)。このインフラ建設の実現は地域に大きな発展の機会をもたらす。しかし世界銀行、ADB、各国政府ODAだけでこれを賄うのは現実的には無理がある。そのような中、中国がAIIBという国際金融機関を設立し、新たな資金供給源として貢献するアイデアはアジア諸国にとって大いに歓迎するところであった。

アジアでは8兆ドルもの膨大なインフラ需要が存在す(BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 中国は14年半ばより自らの国内経済を「ニューノーマル」と呼び、成長速度を落とす「ギア・チェンジ」を進めている。その前段にあったのは、08年より実施された大型景気刺激策である。この政策では地方債務の拡大を伴う、膨大なインフラ建設が進められたが、その結果、国内投資は一部で効率の逓減が見られている。

 他方で、近隣諸国におけるインフラ需要は強く、投資効果が高い案件も多い。中国がこのような近隣・連接地域のインフラ建設を支援することは、当該国・地域の経済成長を促すだけに留まらず、中国にもその恩恵が返ってくる。例えば、カザフスタンの中国国境周辺での物流基地建設、メコンデルタ地区での道路橋梁建設、インド洋周辺国の港湾パイプライン建設等は中国経済のみならず、場合によっては安全保障上も中国にメリットをもたらす。

 AIIBは、現状の22カ国でスタートし、米・日・豪等先進国の参加がなければ、中国政府の意向を色濃く反映した国際機関となり、ここに中国の政策性銀行・国有商業銀行・国有企業がコンソーシアムを組んで開発案件に参入してくれば、アジアインフラ案件は中国の思うように進むかも知れない。中国はアジア全体への影響力を強め、正に中国の「勢力圏」が構築できる。約4兆ドルの外貨準備を含む過剰貯蓄の還流・運用ルート拡大・多様化にもつながる。正に一挙多得という「夢」のような状況が出現しそうである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る