中国メディアは何を報じているか

2014年12月26日

»著者プロフィール
著者
閉じる

弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国共産党ナンバー5の劉雲山常務委員が12月17日に北京の北朝鮮大使館を訪問し、習近平国家主席による中国と北朝鮮の伝統的友好を強調するメッセージを伝えた。もともと歴史的に「唇歯の関係」、「血の友誼」と緊密さがうたわれてきた中国と北朝鮮(以下、中国の言い方に習い「中朝関係」と呼ぶ)だが、ここ2年近く首脳交流は行われず、石油の対北輸出も止められているとされる中での大使館訪問だったため、関係改善も言われ始めた。

 とはいえ、核開発を強行し、ナンバー2で中国との関わりの強かった張成沢氏の処刑は中国を当惑させ、面倒な存在だと感じていることは疑いない。そうした中国の北朝鮮認識は有事の際に中国がどうするべきかという論争に見出すことができる。クローズアップされているのは『環球時報』紙での論争だ。

 退役将軍が、北朝鮮のために戦う必要はなく「崩壊するならしょうがない」と述べた一方で、別の専門家は「パートナーを放棄すべきではない」と主張する。そこでこの二つの文章、『環球時報』紙(11月27日付)に掲載された浙江大学韓国研究所の李敦球・客員研究員による「朝鮮というこの65年のパートナーを“放棄”できない」と王洪光退役中将による「朝鮮がもし崩壊すれば中国は助けられない 中国人は朝鮮のために戦う必要はない」(12月1日付)を紹介する。

中国で主張される「北朝鮮放棄論」とは?

 李研究員は、中国では絶え間なく「中朝関係を否定する意見がある」と嘆く。「北朝鮮放棄」を主張する声さえもあり、戦略研究者にも同じ様な考えを持つ者がいると危機感を露わにする。李氏によると「北朝鮮放棄論」の根拠の一つは伝統的な地政学の政治概念は既に時代遅れであり、現代の戦争では地政学的「風よけ」は必要なく、北朝鮮が中国の戦略的防御壁の役割を果たす事がなくなったためだという。

 李氏は、これは間違いだと批判している。もしこの論理が成り立つなら、米国は韓国や日本から軍を撤収させていないし、そればかりか軍事プレゼンス強化の現状を説明できないと指摘する。結論からすれば依然、朝鮮半島に地政学的価値があるというわけだ。もう一つは、中朝両国には少なからず矛盾、摩擦、分岐があって北朝鮮は中国のいう事をきかずマイナスのアセットになっていると思いこんでいることだ。

 金正恩体制になり、中国と北朝鮮関係は冷え込んでいるものの、李氏は3つの点から「放棄論」に反論する。まず、中朝は二つの独立国で国益が完全に一致する事はありえず、意見相違は当然だから矛盾を区分して管理しさえすればいいという。第二に、現在の中朝矛盾は日中のような領土、領海、歴史認識といった深刻な矛盾とは異なり、戦略的矛盾ではないから、ソ連と決裂した轍(てつ)を踏むわけにはいかないという。中朝はそれぞれ相手を必要としており、中国の一方的独りよがりではないというわけだ。第三に、北朝鮮問題は冷戦期から残る問題で朝鮮半島での冷戦の基となる「停戦協定」や「米韓同盟」と結びついているから、こうした基盤を取り除かずに問題解決はありえないという。中朝両国は地政学的に根本的利益が一致しており、地政学的構造で根本的変化がないうちは両国の利益が変わる事もないだろうと指摘する。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る